F1中国GP後からマイアミGPまでの間に、ニコ・ヒュルケンベルグが今季限りでハースを離れ、ザウバーに移籍することが発表された。ヒュルケンベルグは決断をするうえで、ザウバーCEOのアンドレアス・ザイドルの存在が原動力になったという。

 ザウバーは2026年から、アウディとしてF1を戦う予定であり、複数年契約を結んだヒュルケンベルグは、アウディF1で戦うことが決まった最初のドライバーということになる。

 この移籍は、昨シーズン中盤から交渉が進められていたモノだという。実際、ヒュルケンベルグが今季からザウバーに移籍することも話し合われていたようだ。

 ヒュルケンベルグにとって、ザウバーCEOのザイドルは旧知の仲だ。ヒュルケンベルグは2015年にポルシェからWEC(世界耐久選手権)にスポット参戦。スパとル・マン24時間の2レースに出たのだが、当時ザイドルがLMP1チームの代表を務めていた。

 そしてヒュルケンベルグはニック・タンディ、アール・バンバーと共に見事ル・マンを制しているのだ。

 今週末のマイアミGPを前に、ザウバー入りに際してザイドルの存在がどれほど大きかったかを尋ねられたヒュルケンベルグは、次のように答えた。

「そうだね、彼が原動力であり、決め手のひとつだった。アウディ経営陣のトップキーパーソンの1人だ」

「それに、彼は僕に対してとても率直でストレートな人なんだ」

 そしてヒュルケンベルグは、ザイドルとの関係を示す一例として、2020年に交わした会話を挙げた。当時ヒュルケンベルグは、前年限りでルノーを離れ、フルタイムのシートを失っていた。

「2020年は、シーズンが始まる前にコロナのパンデミックがあって、自分が何をしたいのか分からなかったことを覚えている」

「でも、彼に電話をしてみたのを覚えているよ。彼は当時マクラーレンにいたからね。『アンディ、どうだい? 僕にチャンスはあるかな?』って聞いたんだけど、彼は率直に『いや期待するな。ありえそうもない』と言ったんだ」

「あれから数年経った今は、全く違った感じになった。彼は僕との契約にとても熱心だったよ」

 また、ヒュルケンベルグにとってはザウバー自体も2013年に所属した古巣となる。

 当時のザウバーはフェラーリからエンジンを供給されており、ヒュルケンベルグは将来的にフェラーリに移籍するのではないかと多くの人から注目を集めていた。ただ翌2014年、フェリペ・マッサの後任としてキミ・ライコネンがフェラーリに復帰し、フェルナンド・アロンソのチームメイトとなったため、移籍が実現することはなかった。

 ヒュルケンベルグは、「すべてがうまくいっていたよ」と2013年を振り返った。

「難しかったのはひとりだけだった。当時はモニシャ(カルテンボーン)がチーム代表だったから難しかったしトリッキーな状況だったけど、それ以外は問題なかった」

「僕がこれまで働き、レースをしてきたチームやメカニック、エンジニアと問題を抱えたことはなかったし、チームメンバー全員と協力し、チームとして力を合わせてパフォーマンスを追求することを楽しんできた」