WRC(世界ラリー選手権)のプロモーターはラリー・ポルトガルの際に行なわれたミーティングにおいて、ヒョンデ、トヨタ、フォード、スティランティス、シュコダといった各メーカーに対して、シリーズの知名度向上に向けた計画を提示した。

 WRCに参戦するチームやドライバーはこれまでシリーズのプロモーションに批判的であり、WRCプロモーターにとってはその改善が重要な目標であった。そしてプロモーターは関係者の懸念に対処する形で、プロモーション強化のための詳細な計画を伝えたのだ。

 コンセプトの詳細は公表されていないものの、WRCプロモーターは2026年のアメリカ開催に向けた明確なロードマップを示した。彼らはイベントに直接投資し、イベントのプロモーションにも関わるという。

 それ以外にも、イベントでの観客動員を増やすための施策も示された。ソーシャルメディアやデジタルメディアにも投資し、さらにはファンの体験価値を高めることを目指すという。

 こういったWRCプロモーターのプレゼンテーションは各チームから好意的に受け止められている。各チームの代表がmotorsport.comの取材に応えた。

■トヨタ「プロモーターが力を入れているのが分かる」

 トヨタのチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラは、示された方向性に感銘を受けただけでなく、WRCプロモーターの力を入れようを目の当たりにしたことも喜ばしいと語った。

「提示されたものは全体的にとても良いものだし、彼らはラリーUSAの開催を切望している。これは非常に重要なもののひとつだと思っている」

「彼らはこのスポーツをよりエキサイティングなものにして、多くのファンを取り込むため、これまでとは違ったアプローチを取ろうとしている。彼らのアイデアを見られたことはポジティブだったと言わざるを得ない」

「私としては良い方向性が見えていると思うし、彼らのやりたいことが明確になった。統制も取れていると思うし、良い取り組みだと思う。プロモーターが力を入れているのが分かるし、それは良いことだ」

■Mスポーツ・フォード「今こそ実行に移す時」

 2026年にアメリカでWRCを開催するという計画は、フォードからセミ・ファクトリーサポートを受けているMスポーツにとっても好都合だ。

 チーム代表のリチャード・ミレーナーは、WRCの明確なプロモーション戦略に感銘を受けているという。

「約束されたものが実現されれば、とてもポジティブだと思う」とミレーナーは言う。

「今後数年間彼らが何をしたいかについての明確な戦略が示された。知っての通り、彼らはアメリカでのイベントを実現されるという明確なアプローチを表明している。それだけで全てが解決するわけではないが、非常に大胆な表明であり、その先には多くの良い出来事が待ち受けているだろう」

「鍵となるのはそれを実行すること。今は2027年に向けての技術面での枠組みをFIAと話し合っているが、その中でも良い決定が下されている。これらが最終決定され、できるだけ早く実行に移される必要がある」

「我々に対して示されたものはポジティブであり、その言葉を実行に移す必要がある。それができることを願っている」

■ヒョンデ「FIAとプロモーターが推進力になるべき」

 ヒョンデのチーム代表を務めるシリル・アビテブールは、WRCプロモーターが示したビジョンを「素晴らしい指針と行動の一覧」だったと表現した。しかしその一方でF1のチーム代表の経験もあるアビテブールは、WRCのガバナンス面がそれらの障壁になることを懸念しており、FIAとWRCプロモーターが選手権をあらゆる面でうまくコントロールする必要があると語った。

「プレゼンされたものに関しては、全く問題なかった」とアビテブールは言う。

「アメリカのイベントを加えてカレンダーをより良いものにすることや、放送のやり方を少し違ったものにすることも、何ら問題ない。素晴らしい指針が数多く示された」

「このスポーツがどのような構造になっていて、どのような利害関係者がいて、どうすればうまくこのスポーツをコントロールできるのか、それを全体的に検討する必要があると思う。何より欠けているのは、我々の望む方向にこのスポーツを導く能力だと思っている」

「だからプロモーターとFIAがラリー界における推進力となれるように、どのような変化が必要かについて考える必要がある。というのも、ラリー界におけるガバナンスにまとまりがないからだ」

「具体的な例を挙げるとすると、我々は皆イベントのフォーマットに不満を持っている。それで我々はプロモーターやFIAと話をするが、イベントのフォーマットを決定するのは彼らではなく、各イベントのオーガナイザーなのだ。これは重要なことだ」

「他のカテゴリーでは、プロモーションや組織などに関する多くの決定がコントロールされている。我々は自分たちのイベントなのにお客さん状態になるのを止め、コントロールを取り戻さないといけない。そうでないと、我々が実行したい変革も頓挫してしまう」