MotoGP第5戦フランスGP決勝を9位で終えたアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)はレース中の接触をめぐるスチュワードの対処方針を批判している。

 エスパルガロは決勝レース中に、ふたりのライダーと接触があり、序盤は3番手を走行していたもののポジションを下げて9位となった。

 1回目はエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ)との接触。7周目にターン9、10でイン側からバスティアニーニが抜きにかかると、エスパルガロは転倒を避けるためにコースを外れざるを得なかった。

 そしてレースラストラップにも接触があった。エスパルガロは最終コーナーでフランコ・モルビデリ(プラマック)と交錯し、ここではモルビデリだけではなくブラッド・ビンダー(KTM)にも追い抜かれてしまった。

 エスパルガロの絡んだこのふたつのインシデントでは、バスティアニーニがシケインをカットしていたことでロングラップペナルティが科されたものの、それ以上の裁定は下されなかった。

 そしてレース後、エスパルガロはスチュワードがなぜもっと真剣にこのインシデントを受け止めていないのかと、困惑する気持ちをあらわにした。

「僕はトップ5フィニッシュを果たすのに十分良いペースがあったんだ。でもエネアがかなりの高速で僕にぶつかってきたんだ。幸運なことに、そこにはランオフエリアがあった」

「なぜ彼がこの行動でペナルティを受けなかったのか、理由が分からない。ディッジャ(ファビオ・ディ・ジャンアントニオ/VR46)とファビオ(クアルタラロ/ヤマハ)の後ろでタイムをかなりロスしてしまったんだ。何度もオーバーテイクをやりあっていてね」

「そして最終ラップのシケインではフランコが僕にかなり厳しく当たってきて、ビンダーにも追い抜かれてしまった。彼はレース後に謝ってきたけど、結局ペナルティは受けていない。僕には本当に何もできなかったんだ。とても妙なレースだった」

 以前からエスパルガロはスチュワードに批判的な言動をしてきたが、今回の件でも、スチュワードがインシデントそのものではなく、インシデントで発生した影響によってのみペナルティ科すかどうかを決定していると批判した。

「エネアとの件では、僕はバイクをとても素早く引き起こさざるを得なかった。フランコとの件だって、僕が避けていなかったら、クラッシュしていただろう」

「感覚としては、彼ら(スチュワード)はクラッシュがあったときにだけペナルティを科すだろうということだ。だけど結果ではなく行動に基づいて判断してペナルティを与えなくちゃいけないんだ」

「僕が自分のラインに固執していれば、ふたりとも吹っ飛んでいただろう。僕たちはかなり速度があって、エネアがアタックするには遅かった。良く分からないね」

「僕は自分のレースが台無しになった。あの段階ではそう悪いものではなかったんだけどね。優勝争いや表彰台争いではなかったかもしれないけど、いい調子だった。だけどあそこで6秒を失ってしまった」

 ただスチュワードに対してこうした見解を説明するつもりなのかという質問に対して、エスパルガロは諦めの姿勢を見せた。

「何も変わらないだろうからね。しないよ」とエスパルガロは言う。

「僕は寛大だ。気にしていない」

「彼らは映像を見て、行動は起こさなかった。『ちょっとこっちで説明して欲しい』と言われてやってみても、何も変わらないんだ。だからこのままで構わない」

 なおエスパルガロとモルビデリの間には、以前からこうしたレース中のインシデントを巡る確執がある。今回の一件についてモルビデリは、次のように語った。

「僕がちょうどオーバーテイクを仕掛けようとして、最終コーナーで試みたんだけど、彼はあまりその動きに満足していないみたいだね。でも、僕も今では彼のそういった振る舞いには慣れている」

「僕らは接触してすらいないんだ」

 さらにモルビデリはエスパルガロが回避しなければクラッシュしていただろうという主張に対しては、F1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペンの「もし僕の母に”度胸”があったら、彼女は僕の父になっていただろうね」というコメントを引用して答えた。