レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコ博士が、現在RBのドライバーとしてF1を戦う角田裕毅、そしてF1昇格を目指してスーパーフォーミュラを戦う岩佐歩夢について語った。そして2025年にレッドブルでマックス・フェルスタッペンのチームメイトとなるドライバーについては、スペインGPまでにはほぼ明確になるだろうと明かした。

 F1での4年目のシーズンを戦う角田は今季ここまで、印象的な活躍を見せ続けている。獲得ポイントは15、安定して予選Q3に進出し、チームメイトのダニエル・リカルドに差をつけているだけでなく、トップ5チームの一角と目されるアストンマーティンのランス・ストロールをも上回るランキング10番手につけている。

 この角田の今季の活躍について、マルコ博士は非常に高く評価している。

「ユウキが一貫して速く、感情をコントロールできているのは、今シーズンが初めてだと言わなければいけない。それが、彼の最大の問題だったのだ」

 マルコ博士はそう語った。

「公平を期すために言っておくが、彼はこれまでも、瞬発的にはスピードを発揮していた。しかし今年は、中国のレース以外は一貫して速い。彼は合計6レースでそれを証明した。このことはもちろん、彼のプロフィールと評価を変えることになる」

 このことで、レッドブルが2025年のドライバーとして角田を検討することになるのか? そう尋ねられたマルコ博士は、次のように語った。

「そのためには、もっと長期的に安定しなければいけない」

 角田はレッドブルだけでなく、ホンダもサポートしてきたドライバーである。しかしレッドブルは2026年からはホンダ製ではなく、自社製のパワーユニット(PU)を使うことになり、逆に同年からアストンマーティンがホンダ製PUを使うことになる。そうなると、レッドブルと角田の関係にも影響が及ぶ可能性も考えられる。

 実際ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長はmotorsport.comの取材に対し次のように語り、角田がホンダPUを搭載しないマシンで走る可能性があることも示唆している。

「角田選手には、まずは今のRBでしっかり活躍してもらい、レッドブルに昇格してもらう……それが非常に美しいストーリーだと思います。もし仮に、それが我々がいなくなった後(レッドブルがホンダ/HRC製PUを使わなくなった後)だとしてもです。日本人ドライバーがトップチームに登り詰めていくこと、それは我々もしっかりと見守っていきたいです」

 これについてマルコ博士はどう考えているのか?

「ホンダは長いことユウキをサポートしてきた。だからもちろん、状況を見なければいけない」

 そう語るマルコ博士は、もうひとりの日本人ドライバーのことも忘れてはいない。

「しかし非常に良いレースをした、もうひとりのホンダ系ドライバーがいる。岩佐だ。彼はスタートが悪く、2戦続けて勝てなかった。それでも、スーパーフォーミュラでランキング3番手だ」

「彼らふたりは、我々と長期契約を結んでいる日本人ドライバーだ。彼らと将来どういう形で働けるのか、それを整理する必要がある」

 岩佐が2025年にF1で戦うために何が必要か? そう尋ねるとマルコ博士は「スーパーフォーミュラで優勝すること」だと語った。

「彼がどうやって勝っていくのか、それを見てみようじゃないか。最初のレースはあまり良くなかった。でも2戦目のレースで彼は、圧倒的な立場のドライバーになった」

「他にもハジャー(アイザック・ハジャー)やマルティ(ホセ・マリア・マルティ)も我々にはいる。まあ彼はミスが多すぎるがね。そしてF3にも速いドライバーがいる」

「特にハジャーは、最初のレースのことを考慮する必要がある。彼は優勝を目指せるポジションにいた時、ふたつの技術的な問題に見舞われた。それでレースを完走できなかったんだ。それでもランキング3番手につけているので、今年最も速く、最も安定したドライバーのひとりであることは間違いない」

 今季レッドブルのマシンを走らせているセルジオ・ペレスは、チームメイトのマックス・フェルスタッペンと同じような成績を残すことができておらず、今季限りでシートを失うのではないかという噂が絶えない。フェルスタッペンの来季のチームメイトはいつ決まるのか? そう尋ねられたマルコ博士は、次のように明かした。

「バルセロナ(第10戦スペインGP)の頃までには、明確な全体像が見えてくるはずだと思っている。その頃までには、我々の中で明確なアイデアが固まっているはずだ」

 その最有力はやはりペレスなのか? それについてマルコ博士は明言を避けた。

「彼は良い位置にいると思う。ポールポジションとは言えないかもしれないが、彼は良いポジションにいるだろう」