銭湯や日帰り温泉施設などの公衆浴場を子連れで利用する際、小学生になった異性の子どもとの混浴をいつまで続けるかは、親たちにとって悩ましい問題だ。近年、子どもの体の発達が早くなっていることなどを背景に、全国の自治体で混浴の制限年齢を引き下げる動きが加速しているという。兵庫の現状を調べた。(岩崎昂志)


 3月末、神戸市東灘区の銭湯を訪れると、会社員の女性(47)が6歳の息子と利用していた。市の条例改正で、4月から子どもの混浴の制限年齢がこれまでの「10歳以上」から「7歳以上」に変わることを知り、改正前に入っておくことにしたという。

 新ルールについて、女性は「今の子は体格も大きい。『10歳』という基準は古すぎる」と理解を示す。ただ女性はシングルマザーのため、息子を1人で男湯に入れるのは不安とも。「1人で入る練習をさせないと。もう少し大きくなるまで、銭湯は我慢かな」

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 混浴の制限年齢は自治体の多くが条例で定めており、政令市と中核市はそれぞれの市が、他の市町は都道府県が決めている。このため全国的に地域や施設で差があるが、兵庫県内では国が示す目安に従い、従来は「10歳以上」が主流だった。

 流れを変えたのは、2020年12月に厚生労働省が出した通知だ。公衆浴場での混浴年齢に関する研究報告を踏まえ、目安を「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」に変更した。

 この研究の調査では、成人が「混浴を禁止すべき」と考える年齢は「6歳から」が最多で、「7歳から」が続いた。子どもが混浴を「恥ずかしい」と思い始める年齢も、6、7歳の割合が高かった。

 厚労省の通知を受け、全国で混浴の制限年齢を引き下げる条例改正が相次いだ。兵庫県内では尼崎市が21年4月に「7歳以上」に変更。今年4月には神戸市のほか、県と明石市も同様に変えた。西宮市も条例改正案が市議会で可決されており、周知期間を設けた上で7月に改める。

 現時点で「10歳以上」を維持する姫路市も、「見直しの検討は必要と考えている」(担当者)とする。

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 ルールを見直した自治体では違反した場合の罰則などは定めていないが、担当者は「目立った反対の声はなく、公衆浴場の事業者も好意的に受け止めている」と話す。

 実際、銭湯などでは主に女性客から異性の子どもの利用について苦情が寄せられていたという。県公衆浴場業生活衛生同業組合(神戸市中央区)の丸岡伸年事務局長(63)は「体の大きい子がいるとやはり気になる。最近はサウナブームで若い人の利用が増えており、配慮が必要だ」とする。

 神戸市内の事業者らでつくる同市浴場組合連合会の立花隆会長(63)=同市東灘区=も「以前から自主的に混浴年齢を下げていた事業者もいた。お客さんに安心して入浴してもらうためにも、基準が統一されてよかった」と歓迎する。

 一方、冒頭の女性のように、子育て中の親からはケースによって複雑な声も聞かれる。

 銭湯をよく利用するという同市東灘区の女性(45)には、長女(12)と長男(7)がいる。「娘の立場になれば、年齢の近い男の子との混浴なんて考えられないが、夫が同行できないときに息子1人で男湯に行かせるのはまだ心配。正直、悩ましい」

 立花会長は「銭湯には常連客が比較的多い」とし、「1人で入浴している子がいたら、周囲の大人たちには見守ってもらいたい」と協力を呼びかける。

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 この記事は神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」に寄せられた情報を基に取材しました。