2023年10月に世界初公開されたスズキのコンセプトカー「eWX」は、軽規格に収まるハイトワゴンですが、3代目の次期「ハスラー」の姿ではないかと噂されています。果たしてどのようなクルマになるのでしょうか。

次期「ハスラー」は2026年早々にデビューか

 2023年10月の「ジャパンモビリティショー2023」に登場したスズキのコンセプト軽BEV(バッテリーEV:電気自動車)の「eWX」。そのスタイリングから次期ハスラーではないかとウワサされています。
 
 現行ハスラーは、スズキの軽自動車の中で「スペーシア」に続いて2番目に売れている人気モデルですが、次期ハスラーは、eWXのようにBEVへシフトしていくのでしょうか。

 eWXのコンセプトは、「実用性とワクワクを兼ね備えた軽EV」。バッテリーEVとなってもいままでと同じように使え、BEVとなることで力強く静かになるため、もっと快適になる、としています。

 ボディサイズも公表されており、全長は3395mm、全幅1475mm、全高1620mm。現行ハスラーは全高1680mmですので、eWXはやや背が低いようです。

 一充電の航続距離は230km。日産「サクラ」/三菱「eKクロスEV」の180kmより1.3倍も長めに設定されています。

 エクステリアデザインは、シンプルですっきりとした、分かりやすいボディ造形。

 角(かど)が丸い長方形をモチーフに、先進感の中にも親しみやすいキャラクター付けがされており、カラーリングも先進性のあるグレーと、鮮やかな蛍光イエローのアクセントが効いた、お洒落なデザインです。

 四角いけれど、節々に丸を組み合わせたエクステリアデザインは、現行ハスラーのデザインに通じる部分もあります。

 インテリアは、メーターからセンターディスプレイまでを一枚の液晶モニターでまとめ、インストルメントパネルのうえにフローティングさせたデザインで、エクステリアデザインと関連付けているような、角丸長方形をモチーフにしています。

 また、ホワイトをアクセントカラーに追加したことで、明るいイメージを取り込んでおり、非円形のステアリングホイールも、車内の優しい雰囲気にぴったりとマッチしています。

 筆者(自動車ジャーナリスト 吉川 賢一)は、eWXが次期ハスラーの姿を示唆していると予測しています。

 初代ハスラーが登場したのは2014年1月、2代目は2020年1月ですので、ハスラーはちょうど6年間でフルモデルチェンジをしており、となると3代目ハスラーが登場するのは2026年1月頃になるはず。

 コンセプトカーの登場からおよそ2年後に市販車が販売されるのはよくあることなので、モデルチェンジサイクルからも、eWXが次期ハスラーのコンセプトカーだと考えられます。

数年後に「ハスラー」が全て電気自動車になる!?

 気になるのは、eWXがBEVであったことです。

 スズキは、2023年1月に発表した「2030年度に向けた成長戦略説明会」のなかで、「日本市場は2030年度までにBEVを6モデル展開する」としており、資料にも6台のシルエットが登場していました。

 スズキの将来戦略の中では、次期ハスラーのBEV化は既定路線にあると考えられます。

 しかし、売れ筋モデルとなっているハスラーを手放し、BEVという“リスキー”な商品へ、2026年の時点で全てを置き換えることはないと、筆者は予想しています。

 通常のガソリン車は残しつつ、派生車として“ハスラーBEV”を後から追加する、というのが妥当なシナリオではないでしょうか。

 またeWXの航続距離が230kmというのも気になります。現行の技術で考えると、そのぶん大きなバッテリーを積むことになり、サクラの250万円から300万円を超える価格になることは避けようがありません。

 とはいえこの辺りについては、数年後に車載バッテリーが飛躍的に進化することを想定した「期待値」と考えることもでき、あくまでも参考程度に考えておいたほうが良いでしょう。

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 コストにシビアな軽自動車において、会社側の都合、あるいはEVを推進する国の都合で人気モデルをBEV化しても、既存顧客がもれなくついてくるとは限りません。

 BEVの価格がガソリン車以下まで安くなれば、次期ハスラーをBEVへ全て置き換えることは有効ですが、既存BEVのコスト構造での実現が難しいことは、賢いスズキならば百も承知でしょう。

 筆者は、eWXのデザイン要素を取り入れたガソリンモデルが次期ハスラーとなり、BEV版が遅れて追加という流れで、販売比率は、ガソリン車が8に対してBEVは2を狙う、といったシナリオになると予測しています。