2024年4月2日、トヨタは「カローラ」の一部改良を実施しました。1966年のデビューから60年近く主力モデルであり続ける秘密について探ります。

幅広いユーザーのニーズをバランスよく受け止め続けてきた「カローラ」

 トヨタは2024年4月2日、「カローラ」を一部改良するとともに、カローラ(セダン)と「カローラツーリング」(ワゴン)にスポーティな内外装を持つ特別仕様車「ACTIVE SPORT」を新設定しました。
 
 同社の大衆車ブランドとして、デビューから50数年にわたって主力モデルであり続けたカローラの強さとは、一体どこにあるのでしょうか。

 1966年に誕生して以来、私たちの生活を見つめて進化してきたトヨタのロングセラーモデル「カローラ」。

 長年かけてその血筋を脈々と受け継いできたカローラシリーズですが、2018年に12代目の現行型モデルが登場しました。

 日本市場においては、ハッチバックの「カローラスポーツ」が先行発売された後、2019年に「セダン」や「ツーリング」が追加されたほか、2021年にSUVの「カローラクロス」、2022年にはスポーツドライビングの悦びを満喫させてくれる「GRカローラ」の5つのモデルをラインナップ。

 加えて、5ナンバーに収まるコンパクトサイズの先代(11代目)「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」も、グレード体系を整理し継続販売されています。

 このようにカローラは、多様化するライフスタイルやニーズに応えるかたちで、これまでも多彩なモデルを展開してきた経緯があります。

 トヨタの環境車のイメージは、1997年に登場したハイブリッド車のプリウスがけん引してきましたが、2022年登場の5代目プリウスは、個性を強めたエクステリアデザインや走りを際立たせる方向に舵を切り、エモーショナルな要素を高めてきました。

 実はこのようにプリウスが大きく変貌できた背景には、同じクラスのカローラシリーズが幅広いユーザーのニーズを受け止めてくれていたからこそだったといえます。

 日常的な用途からレジャーまで、ストレスなく向き合えるカローラは、ユーザーのニーズをバランス良く受け止めてくれる存在です。

 コンパクトなサイズのわりに大人が十分に座れるだけの居住スペースと、実用的に使い倒せる荷室を備えたパッケージングが重宝されてきました。

 今回は、そんなカローラシリーズのなかでも、特に安定した販売を続けるカローラ(セダン)とカローラツーリング(ワゴン)について、人気の秘密を探ってみましょう。

 カローラには低重心パッケージのTNGAプラットフォームが採用されていますが、なかでも、セダンやツーリングの全高は先代型(11代目)よりも25mm低い1435mm。全幅は少し拡がり、従来の5ナンバーから3ナンバー化したものの、1745mmに留めています。

 最近のクルマは刷新のたびに大柄化していく傾向がありますが、全幅1800mm以下、全高1550mm以下の日本にありがちな機械式駐車場に収まるサイズを守ってきてくれたことは、マンション住まいでクルマ選びに制約が生まれてきた人にとって、嬉しいポイントです。

 ちなみに、全幅は拡がったものの、前輪の切れ角が大きくとれるようになったため、最小回転半径がわずか5m。実質的な小回りのしやすさが維持されているあたりは、日本のユーザーを取り巻く環境を見つめ続けてきたカローラらしい伝統が受け継がれていると感じる美点のひとつです。

2024年4月の一部改良でより精悍なマスクに進化!

 2024年4月にカローラは一部改良が行われましたが、フロントマスクは力強さを増したフロントグリル、LEDヘッドランプの先進性もあって、精悍な顔立ちに。

 エクステリアデザインの観点からみると、幅が狭いクルマは存在感を出しにくく、一歩間違えると弱々しく見えたり、野暮ったく見えてしまうことがありますが、キリリとした表情とダイナミックな造形が全体をスタイリッシュにまとめ上げているあたりはお見事。

 マイカーとしても、社用車としても重宝されるカローラは数多く普及するモデルとなるだけに、日本の道路を取り巻く景色を格上げしてくれている感じがします。

 さらにインテリアにも注目してみましょう。

 インパネは薄型でワイドなデザインで、車内は明るく開放感を感じるものになっています。

 ディスプレイオーディオはスマホアプリと連携して音楽再生やマップアプリなどを活用できるもので、高精細なディスプレイで見栄えも洗練されています。

 スマホ世代には欠かせない充電用のUSB端子はType Cのものがセンターコンソール内に1つ全車に標準装備されていて、GまたはW×Bグレードの場合は、後席の足元に2つ標準装備されます。

 さらに、W×Bはメーカーオプションとして「おくだけ充電」も選択できるそうです。

 またハイブリッド車の場合、メーカーオプションとして、ガソリンエンジンが発電した電気を使ってコンセントからAC100V/1500Wまでの家電を使える非常時給電システムを設定。ガソリン満タンで、400Wを使用した状態であれば、約4.5日分の電力を供給できるので、災害時など、野外で役立ちそうです。

 カローラはそれ以外の快適装備も充実させています。

 シートヒーターやステアリングヒーターを用意しているほか、空気環境にもこだわっていて、エアコンの吹出口にはお肌や髪にやさしい弱酸性で、ウイルスや菌を抑制したり、脱臭効果が期待できるパナソニックのナノイーXが搭載されています。

 実際に使っているユーザーからは「車内で食事をした後の臭いが気になりにくい」といった声も聞こえてくるので、レジャー用途、子育て中のご家族やペットとお出掛けするみなさんにも注目してみてほしい機能のひとつです。

 ドライバーの視点でみると、運転席はフロントウィンドウを支えるAピラーやドアミラーが運転時に死角になりにくくなっていて、交差点付近の人や自転車の往来を目視で確認しやすいのは安全運転に貢献してくれそうです。

 ハンドルは上下前後の調整機構が標準装備されていて、自分の体格に合わせて最適な運転姿勢がとりやすく、運転しやすそうです。

 運転の不安をサポートする要素としては、先進運転支援機能「トヨタセーフティセンス」が標準装備されます。

 衝突被害を軽減する自動ブレーキ機能をはじめ、車線からはみ出すリスクを減らす操舵支援や、高速走行の際に前走車との車間を維持して追従走行を行うレーダークルーズコントロール、プロアクティブドライビングアシストと呼ばれるカーブ手前や前走車に迫った時などに自動的に車速を制御してスムーズに走れる機能を追加するなど、ドライブを安心・快適に楽しむための先進安全装備もしっかりと盛り込まれています。

日本ユーザーの「欲しい」が揃った欲張りな1台だ

 着座位置はセダン、ワゴンモデルのツーリング共に比較的低めにレイアウトされていますが、クッションの当たりは優しく、身体に馴染みやすいもので、身体を預けてリラックスできそうです。

 後席には大人がしっかり座れる空間を与えながらも、広く使える荷室が備わっているのもカローラの強み。セダンの場合、ハイブリッド仕様で専用ユニットを搭載しているケースでも、FF車であれば後席に乗員が座った状態で9.5インチのゴルフバッグを3つ搭載することが可能。

 さらに、W×Bグレードには後席の背もたれを6:4の分割式で可倒できる機構が標準装備されるため、荷室高を確保しにくいセダンでありながら、長尺物を搭載することもできます。

 一方で、ワゴンモデルのツーリングの場合、レジャーやビジネス用途で活躍する機能的な荷室が備わっています。

 後席に乗員が座った状態で930mmもの奥行き、荷室の最大幅は1464mmを確保しているほか、6:4でアレンジできる後席の背もたれを倒せば、ほぼフラットな広い荷室フロアが出現し、最大で1953mmの奥行きを確保することができます。

 また、ツーリングのラゲッジに設定されたリバーシブルデッキボードは裏面が樹脂製のパネルになっているため、水や土で濡れた荷物やペットのケージなどを載せた後に、ウエスで手軽にお掃除できるのも使い勝手の良さのひとつです。

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 街乗りからレジャーまで、日本のクルマをとりまく環境で扱いやすいサイズ感、開放的な視界とリラックスできる居住スペース、車格のわりに荷物を沢山積める荷室空間。

 さらに、現代のクルマに求められる安全性やスマホとの連携機能など、まさに、その時代と向き合う「日本のユーザーが欲しい価値」を欲張りに採り入れたクルマづくりが、カローラが今なお支持され続けている理由なのでしょう。