羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故を受け、国土交通省の検討対策委員会が再発防止策の中間とりまとめを公表した。

 航空管制官の増員や配置の見直しが柱となっている。どのように「監視の目」を増やすのか。実効性の伴う具体策を急ぐ必要がある。

 管制官を増員し、関西国際空港など主要8空港で離着陸調整を担当する管制官を新たに配置することや、航空機が滑走路に誤って進入した際に警告音を鳴らすシステムの導入などが盛り込まれた。

 警告音が鳴るシステムは英仏や韓国などで導入されており、早急な手当が可能だろう。ただ、混雑する空港で頻繁に鳴れば業務に混乱が生じかねないという指摘もある。空港ごとの事情に合わせた整備を求めたい。

 気になるのは管制官増に対する国交省の本気度だ。従来、同省は「現状の管制体制で安全は確保できる」として管制官の増員に取り組んで来なかった。その結果、中途退職や育児休業などもあり、現状では2031人の定員(6月時点)で113人の欠員が出るに至っている。

 航空交通量の増加で、現場の1人当たりの負担は大きくなっていると指摘される。

 中間取りまとめは、こうした現状を踏まえ、「欠員解消と増員対策を速やかに講じる」と踏み込んだ。

 これまで国の公務員抑制策に沿い、空の安全の根幹に関わる要員まで抑制してきたことへの反省や、問題点の洗い出しが不可欠だ。

 国交省は1月の事故後、滑走路への誤進入を常時レーダー監視する追加の人員として、羽田や関西など7空港で順次配置した。要員は、管制官資格を持つ職員を配置転換して捻出している。

 管制官はパイロットへの離着陸の指示や空港周辺の空の交通整理、システムへの入力など、多岐にわたる業務を同時並行でこなす高い能力を求められる。交信は英語が基本で語学力も欠かせない。毎年の合格率は7〜4%と難関で、育成には時間やコストがかかる。

 航空保安大学校の採用拡大など、中長期的な管制官の確保や育成、各空港に応じた配置策などを構築すべきだ。

 もちろん、管制に関わる人員を厚くしたとしても、人為的なミスは起きうる。多重防御のシステムを一層強化し、命を預ける乗客が安心して利用できるよう手を尽くしてほしい。