私ごとで恐縮ですが、このたび新刊の『抗う練習』(印南敦史 著、フォレスト出版)が発売されました。

いつのころからか、抵抗することが“かっこ悪いこと”と思われるようになったのではないか。疑問を感じることや抵抗感を覚えることがあったとしても、それらに抗おうとする人が減ってしまったのではないか――。

以前から漠然と感じていた、そんな思いから生まれた書籍です。

ただし、ここでいう「抗う」とは、“必要以上に”抵抗するとか、“無意味な”波風を立てるという意味ではありません(それではただのトラブルメーカーですからね)。そうではなく、“出すべきときに”声を上げ、“自分がより自分らしく生きていくために”時には抵抗することも辞すべきではないという考え方です。

もっとわかりやすくいえば、「無駄にあきらめるのはやめよう」ということ。

なぜなら、自分の人生は自分のためにあるからです。(「はじめに」より)

どんどん生きづらくなっている時代だからこそ、「どうせ無理だよね」と簡単にあきらめてしまうのではなく、「なにか、できることはないか」と考えてみる。そして、できることを実行してみる。

ここでいう「抗う」とは、つまりそういう姿勢を意味するわけです。

なお本書は二部構成になっており、まず第1〜4章では僕自身の体験を軸に「抗い方」を考察しています。そして第5章では「現在進行形で抗い続けている人」の代表として、1998年に起きた「和歌山カレー事件」の被告人として死刑が確定している眞須美さんの長男(以下、林くん)と対談しています。

ご存知のとおり、この事件に関しては冤罪の可能性が非常に高いことが指摘されています。一方で誹謗中傷も絶えないわけですが、そんななか、林くんはSNSを通じてさまざまな情報を発信し続けているのです。以前からその姿勢に共感していたため、本書を出すにあたって「話をしてみよう」ということになったということ。

そこで今回はイレギュラーではありますが、本日に前編を、5/27(月)に後編をご紹介させていただきたいと思います。まずは、「抗い」について思うことなど。

「いまある状況」を別の角度から見てみる

生きていればいろいろあって当然で、なにかあるたび人は悩んだり苦しみを感じたりします。過去の僕にもいろいろ厄介なことがありましたが、だからなおさら「起きちゃったことが仕方がない」と強く感じるのです。などと書くと無責任なことみたいに、あるいは軽そうに感じられるかもしれませんが、それは違います。

なぜなら、それが起きてしまった以上は本当に「仕方がない」のですから。

起きてしまった事実である以上、それを悲しんだり悔やんだりしたところで、なんの意味もありません。そんなことを考えたところで、行き着く先は「どうせ〇〇なんだから」というネガティブな感情の墓場です。(44ページより)

たとえば僕は高校1年のとき、ひょんなことからロサンジェルスに短期ホームステイする機会に恵まれたことがあります。その際、フェンダーというメーカーの1957年製ヴィンテージ・ギターを超破格値で入手できたのですが、その喜びは一時的なものとして終わってしまいました。半年後に家が火事になり、そのギターも燃えてしまったからです。

そればかりか当然ながら、自分の小さいころの写真など、買いなおすことのできないものもすべて灰になりました。住む家もなくなりました。ですから悔しかったのも事実ですが、その反面、心のなかには「なくなってしまったものは仕方がない」というシャキッとした思いもたしかにあったのです。

燃えてしまった以上はどうにもならないからです。

つまり「起きちゃった」ことが事実なのだとしたら、嘆いたり、愚痴をいうことよりも大切なのは、「では、ここからどう進んでいこうか」と考えることなのです。

慌てたり悲観したりすることなく、現実を「起きてしまったものは仕方がない」と受け入れ、「では、ここからどうやりなおせばいいのか」を具体的に考え、実行するのです。そう考えても、いま目の前にある「どうにもならないこと」を乗り越えるためにはそれしかありませんし、それこそがベストな選択です。(78ページより)

実のところ、ネガティブになるのはいちばん簡単な手段。しかし、そこから始まる未来について考えれば、おのずと新たな道や手段が見えてくるわけです。(44ページより)

ゴールへのプロセスこそが「抗う」意味

そのプロセスが楽しかろうが苦しかろうが、どんな物事にもゴールはあります。

そしてそのゴールの形は、自分の気持ち次第でどのようにも変わるものです。そこで、「抗いたい」という思いつつもうまくいかないというときのために、次の4点を記憶にとどめておくべきではないかと僕は感じています。

① いまがつらくても、ゴールがあることを信じる

② 迷いを捨てて、そのゴールを目指す

③ ゴールの先にあるものこそがベストだと信じる

④ そのプロセスこそが「抗う」ことだと理解する

(86〜87ページより)

まずは①。いまがつらいと、そのつらさが永遠に続くような気分になりがちですが、生きている以上は必ず「なるようになる」かたちでケリがつくもの。

つまり、そうしてたどり着いた場所がゴールだということです。そして、だからこそ重要なのが②。迷うことなく、そのゴールを目指すべきなのです。

ときには、進むべき方向を間違えていたということにもなるかもしれません。しかし、そんなときには方向を修正すればいいだけの話。

いずれにせよ、そういうことを繰り返しながら進んでいけば、やがて必ず③、すなわち「ベストだと信じられるゴール」は見つかるものなのだと思います。

もちろん、試行錯誤しながら進んでいくのは楽ではないかもしれません。しかし、そうしたプロセスこそが④「抗う」ということ。抗って進んでいけば、その先に目指すべき場所、行き着くべきゴールがあるものなのです。なるようになるのです。

「なるようになる」は、「なるべき必然的な結果に落ち着く」ということです。要するに「望みどおりになるかもしれないけれど、ならないかもしれない」ということです。言い方を変えれば、行き着く先が望んでいなかったところだったとしても、それこそが「なるようになった」結果であるわけです。(82ページより)

机上の空論ではなく経験的に、僕は強くそう感じています。(86ページより)


冒頭で触れたように、月曜日公開予定の後編では林くんとの対談に触れたいと思います。彼がひとりで暮らしている和歌山のアパートまで足を運び、飲みながらじっくり話したりもしたので、それなりに興味深い内容になったのではないかと自負しております。

▼後編を読む

【毎日書評】抗うとは?マスコミに人生を狂わされても「僕は親が好きなので」といえる強さの秘密 | ライフハッカー・ジャパン https://www.lifehacker.jp/article/2405_book_to_read-1475/

>>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験!

https://www.lifehacker.jp/regular/regular_book_to_read/ 「毎日書評」をもっと読む

https://voicy.jp/channel/2066 「毎日書評」をVoicyで聞く

Source: フォレスト出版