関西演劇界を代表する女優の一人として、90年代の関西小劇場ブームを牽引し、現在は映像でも舞台でも重宝される存在となったキムラ緑子。中井貴一と共演するリーディングドラマ『終わった人』の会見が大阪市内で5月22日におこなわれ、中井からのラブコールで出演することになった経緯や役作りについて、時おり中井にツッコまれながらも、ほがらかに答えた。

◆「相手役はキムラ緑子さんに」中井貴一からのオファー

定年を迎えた男・壮介が、人生をまだ終わらせないために奮闘する姿をコミカルに描いた、内館牧子の同名小説が原作。中井が壮介のみを演じる一方、キムラは壮介の妻から愛人候補となった女性まで、4役を演じるというのが本作の肝だ。中井は出演オファーがあったとき「相手役はキムラ緑子さんに」というのを、第一の条件にしたという。

中井は「何人もの女性の声を瞬時に変えるのは容易ではないけど、これができるのは僕のなかではキムラさんしかいないと。やらせていただいたら、やっぱり判断は間違えてなかった」と絶賛。一方キムラは「前回、このプレッシャーのなかでやったんですよ! 血圧が上がりました(笑)」と重荷に感じたそうだが、「再演を決めてくださったということは、役目をちゃんと果たせたんだと、ホッとした気持ちになりました」と、再びの共演を喜んだ。

◆ 小悪魔女性を演じるため「がんばってマネをしました」

4役を演じるなかで、特に役作りに悩んだのが、壮介が恋心を抱く若い女性。小悪魔的魅力がありつつも、嫌味にはならないという難役をこなすため「私のイメージでは壇蜜さんだったので(笑)、がんばってマネをしました」と思わぬ裏話を。さらに、原作ではクールな印象を抱いたという壮介の娘は「戯曲で舞台に立つときは、それだと母との関係が作れないなと気づいて、もっと感情を前に出す娘さんにしました」と、繊細な役作りを明かしてくれた。

しかし、単に真正面を向いて座るのではなく、立ち位置がどんどん変わる今回の演出について問われ、キムラが「自然発生的にできた気がします」と回答すると、中井がすかさず「いや、みんなでものすごい考えてましたよ! むちゃくちゃ言うてたやん!」と、流暢な関西弁でツッコミを入れるシーンが。中井は「あれー?」ととまどうキムラに対して「今回が最後(の共演)になるかもしれません(笑)」と言い放ち、危うくタッグ解消となるところだった。

台本・演出は笹部博司。大阪公演は7月13・14日に「森ノ宮ピロティホール」(大阪市中央区)、兵庫公演は7月15日に「兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール」(兵庫県西宮市)にて。前売チケット8800円は完売したが、全公演とも当日券、また立見席(5000円)も発売する予定なので、公式サイトでご確認を。

取材・文・写真/吉永美和子