箱根駅伝「山の神/神野大地」誕生秘話

まさか自分が5区を走るなんて。大学に入った時は、5区を走るどころか、目指したいという気持ちすら1%もありませんでした。2年時はエース区間の2区を走りましたが、その時もまだ5区は目指していなかった。ただ、3年生になってチームとして優勝を目標に掲げた時、5区を少し意識するようになったんです。平地の2区で1分差をつけるのは難しいけれど、山であればそのくらいの差はすぐについてしまいます。優勝するなら絶対に外せない区間で重要性も高く、責任も重大です。

原監督には3年生のときも、今年も2区だと言われていたのですが、「2区は最後に戸塚の壁があるから、しっかり上れるように、坂の練習をしよう」と走った練習で、青学の歴代の先輩のタイムよりも圧倒的に速いタイムを出して5区を走ることが決まったんです。大会まであと2ヶ月でした。自分の走りが、目標を達成できるかどうか左右する。

12月に入って箱根駅伝までの1カ月間は、前年の往路優勝のゴールテープを切るシーンを毎日見て、「今度は自分が箱根でそれを再現するんだ」とイメージトレーニングしていました。そして、毎日のように、山の神になりたいと思って練習していました。2番でたすきを受けとった時、前を走る駒澤大とは45 秒差でした。きついなと思い始めたころに1位の駒大の選手の姿が見えてきて、自分がしっかり走れていることを確認できて。そこで1度リセットしてもう1回ペースを上げられました。相手を追いやすい状況で自分のペースで上れたことが大きかったですね。それに気象条件もよかった。そういったいろいろな要因、タイミングがあってあの区間新は生まれたのかなと思いますね。

【出典】『「山の神」神野大地の必ずやるべきランニングバイブル』 著:神野大地