日本でも、中国から移住してくる人たちは年々急増しています。しかし、祖国から“逃げて”きたとしても、その国からの監視からは逃げることは難しいと無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が伝えています。

中国の「国境なき監視監獄」

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)で中国各地に封鎖令が下された時、中国では「潤学」という言葉が流行した。暮らしを豊かにする学問という意味のようだが、実際は中国から逃げる方法を研究する学問という意味だ。「ユン(潤)」の中国語の併音は「ルン」(run)で、逃げるという意味の英語「ラン」(run)と綴りが同じだ。

中国が急速に経済発展を成し遂げた後から、中国人の中国脱出ラッシュは次第に拡大し、特にパンデミックを契機に多くの中国のエリートたちが海外に発った。現在、中国で生まれた中国人1050万人が中国外で暮らしている。彼らより大きい移民集団はインド人とロシア人、メキシコ人だけだ。

中国人移民者の4分の1は米国に、他の4分の1は香港に居住する。その後に日本とカナダが続く。全体的に海外にいる中国人のほぼ半分が西欧に住んでいるわけだ。彼らはそれぞれ遠大な抱負を抱いて海外に向かうが、国を離れたからといって中国共産党のくびきから脱することは容易ではない。

最近、『エコノミスト』は「習近平国家主席体制下で中国を離れた人々がこれまでになく徹底的な調査を受けている」とし、中国外の中国人に対する中国共産党の抑圧類型について伝えた。まず、主に反体制派を対象とする党の直接的脅威だ。

海外に逃避した腐敗事犯を逮捕、送還する「天王」、海外居住犯罪逃避者を本国に送還する「狐狩り」等がここに属する。海外各地に設置されている中国の「秘密警察署」がこのような仕事をしているというのが一般的な見方だ。

国際人権団体であるセーフガード・ディフェンダーズによると、2023年基準で中国は該当国家の許可なしに計53か国100以上の秘密警察署を設置した。党の綿密な監視は、海外在住の中国人の携帯電話にも広がっている。中国内の居住者だけでなく、海外に住む中国人も主に使用するチャットアプリのWeChatに対する検閲がその例だ。

留学生に対する監視はさらに抑圧的だ。中国人留学生が全世界の「草の根大使」になることを期待すると述べた習主席は、国家奨学金を受ける留学生6万5000人に対する規定を一層強化した。中国当局は時々彼らが研究している内容の詳細事項を要求するが、留学生がこれを拒否すれば国益を害する行為と見なす。この場合、留学生の家族は受け取った奨学金を再び吐き出さなければならない。

全世界の大学キャンパスに設置されている中国学生学者連合会(CSSA)が、留学生監視の役割などをしているという。実際、2022年北京冬季五輪が開かれる前、CSSAジョージワシントン大支部は新疆、香港での人権蹂躙を非難するポスターを貼った人々に対する処罰を直接大学に要請した。

海外に居住する中国人の立場でこのような党の監視が恐ろしい理由は、ややもすれば中国に住んでいる家族がいじめなどの不利益を受ける恐れがあるためだ。2022年11月、中国で「白紙デモ」がしばらく触発された時、海外にいる留学生の相当数がこれに同調し、中国当局は同調した人々の中国内家族を苦しめる形で留学生の動きを統制したと国際人権団体フリーダムハウスは明らかにした。

このような中国共産党の動きは、海外に居住する中国人の身動きの幅を狭める。外国人事業家の立場では、中国共産党とつながり、監視を受ける人を採用することをはばかるのだ。

『エコノミスト』はインド出身移民者と中国出身移民者を比較し「両国出身移民者ともに富裕で高等教育を受けたという点で似ているが、ビジネスと政治分野で中国出身はインド出身より顕著に成功的ではない」と分析した。

実際、グーグルの親会社であるアルファベット、マイクロソフトなど巨大企業を率いる人々のうち、インド出身は多数である反面、中国出身は少数だ。オランダ・レイドン大学のフランク・ピエケ教授は「シリコンバレーの会社の場合、中国出身よりはインド出身を好む」と話した。政治分野でも、インド系のリシ・スナック首相が英国を率いており、インド系の母親を持つカマラ・ハリスが米国の副大統領に再任するなど、インド出身の活躍は目立つが、中国出身はそうできずにいる。

これはひいては中国人に向けた差別として作用することもある。ドナルド・トランプ元米政府が出した「チャイナ・イニシアチブ」が代表的だ。ジョー・バイデン政権に入ってこれは公式終了したが、これによって2018~2022年の間に150人以上の中国学者が起訴され、結局多くの中国系研究者はこれを契機に米国を離れた。知識人でさえ中国出身という理由で米国など西欧の主流社会に編入できないのだ。(文化日報参照)

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