2023年12月の凍えるようなある日、千葉県内の倉庫のような施設に多くの野良猫たちが集まっていました。

近隣の人が「猫のために」とエサを与えていたからです。きっと心優しい思いによるものですが、避妊去勢手術などがなされていない猫も多く、放っておけば繁殖を繰り返し、結果的に行き場を失う猫が増えることが予測されました。

その近所では保護猫ボランティアさんが積極的にTNRを進めていました。「まだ月齢が若い子は人馴れできるはず。こういった子猫は、できるだけ飼い猫になってほしい」と保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D.Ranch)に協力を依頼。保護と里親さんとのマッチングの協力を要請しました。

当初の威嚇から一変。ゴロニャーンの甘えん坊に

メンバーがこの場所から保護したのは2匹のメス猫。初めて見る人間を前に「シャーシャー」と威嚇する一方、いつも一緒に仲睦まじく過ごしていました。後につけられた名前は「シュトーレン」「クグロフ」。美人さんの2匹とその毛並みのミルクティータピー&ホワイトの気品に負けぬよう、美味しい洋菓子の名前をつけてあげました。

当初、威嚇していた2匹でしたが、預かりボランティアさんの献身的なお世話と、その家にいる先住猫のおかげで次第に心を開いてくれるようになり、後には大音量のゴロゴロで甘えてくるようになりました。

それは良いのですが、問題は朝です。特にシュトーレンは朝になると、預かりボランティアさんのベッドのところにやってきて「朝が来たよー。早く起きてね。ゴロゴロゴロゴロ…」と起こしに来るようになりました。その度に預かりボランティアさんは目をこすりながら「まだ起きる時間じゃないよー」と布団を被りますが、それでも保護当初のことを思えば、ここまで甘えてくれるようになったことはうれしく思いました。

「優しい里親さんに今まで以上に甘やかせてもらってね」

クグロフも、甘えん坊ぶりと遊び大好きなところはシュトーレンに負けません。先住猫を真似して、一緒に楽しそうに遊ぶようにもなりました。

スクスク成長するシュトーレンとクグロフに目を細める預かりボランティアさんでしたが、さらにうれしい知らせが。「シュトーレン、クグロフを2匹一緒に迎え入れたい」という里親希望者さんが現れたのです。

2匹とも一定期間のトライアルを経て見事この里親さんの家で、姉妹一緒に「ずっとのお家」をつかむことができました。

かつて寒空の下、倉庫のエサ場に集まってきていたシュトーレンとクグロフですが、これからは全く不安のない環境で第二の猫生をおくることになります。

ずっとお世話をしてきた預かりボランティアさんは、元気に巣立っていくシュトーレンとクグロフを前に「本当に良かった。これからは優しい里親さんに、これまで以上に甘えさせてもらってね」と声をかけてあげました。 

(まいどなニュース特約・松田 義人)