昭和の薫り漂うカー用品

“昭和”を感じさせるカー用品といえば何だろうか。筆者(喜多崇由、フリーライター)が思い浮かべるのは、「毛ばたき」である。タクシーやハイヤーのドライバーが駐車場でよく使っていた、羽根のついた掃除道具である。

 毛ばたきの役割は、車内のほこりを取り除くことだった。間違っても、客待ちをしているドライバーの

「暇つぶしアイテム」

ではない。最近はマイクロファイバー(ナイロンやポリエステルからできている合成繊維)クロスなど、より効果的にほこりを除去できるアイテムが時代とともに登場し、使う人も少なくなった。

 そのため、「最近、毛ばたきって見なくなった」と感じる人もいるかもしれないが、実はクルマのほこり取りには効果的なアイテムなのだ。

やり方によってはクルマに傷ができてしまう場合も(画像:松本羽毛)

ほこり取りに有効な理由

 なぜ毛ばたきがクルマのほこり取りに効果的なのか。クルマに付着するほこりには、実はさまざまなものが含まれている。

・黄砂
・花粉
・化学物質
・鉄粉

などなど。こまめに洗車すればいいのだが、手間も時間もかかる。現代人は忙しい。また、洗車による細かい傷も問題だ。

 そこで活躍するのが、毛ばたきの「ふさふさ」だ。車体の表面にわずかに付着したほこりを払い落とすのに効果的だ。マイクロファイバークロスを使ったモップタイプのはたきだと、つい車体をこすりたくなるが、ほこりが付着したまま強くこすりすぎると、塗装に細かい傷がついてしまうのだ。

 一方、毛ばたきはダチョウやニワトリの羽でできており、適度に「ふさふさ」している。車体を軽くブラッシングしながら回転させて使うのだが、これで車体を強くこする人はまずいないだろう。そのため、車体を傷つけることなく、適度な力でほこりを取り除くことができる。

 メンテナンスのしやすさも毛ばたきの利点だ。マイクロファイバークロスのように洗うことはできないが、軽くはたいたり、手でしごいたりすることで比較的簡単にほこりを取り除くことができる。使用後はパタパタするだけだ。

 もちろん、ときどき日光に当てたり、陰干ししたりすることは必要だが、洗濯や乾燥ほど面倒ではない。

自動車用の高級毛ばたき(画像:松本羽毛)

私達の知らない毛ばたきの世界

 アマゾンで、

「クルマ 毛ばたき」

と検索すると、ズラリと商品が検索される。化学繊維でできたモップタイプの製品が1000円から2000円程度であるのに比べ、毛ばたきは5000円から1万円以上と、意外と高価である。なかには非常に高価な商品もある。

“高級毛ばたき”を扱う松本羽毛(京都府亀岡市)のウェブサイトには、「各種専用素材と本物の手巻きによる国内唯一の『完全ハンドメイド工法』で作られた高品位ブランド」と書かれている。素材も本物のオーストリッチ最高級羽毛である南アフリカ原産一級黒色フロス羽毛を厳選して使用している。

 1年間の無料修理保証書と取扱説明書が書類ケースに入っている徹底ぶりだ。気になる価格だが、商品一覧にある「悠薫“Yu-ga”」は

「10万5600円」

だった。しかし、商品のクチコミを見ると、

「想像以上にほこりが取れ、塗装の光沢がでた感じがしてすごく感動した」
「ソフトなタッチで気持ち良くほこりが取れていきます」

など、絶賛の声が寄せられている。

 もちろん、高価であればいいというものではない。アマゾンなどで1万円以下で販売されている毛ばたきのレビューでも、「ほこりがきれいに取れる」「使い勝手が良い」などの評価があり、多くの人が毛ばたきの効果を実感しているようだった。

オーストリッチ(画像:写真AC)

ほこり対策に効果的な静電気対策

 クルマのほこりは「静電気」が原因だ。つまり、静電気対策をすれば、同時にほこり対策もできるのだ。洗車でも、拭き取り時の摩擦で静電気が発生する。もちろん、毛ばたきでクルマをブラッシングするときにもクルマとの摩擦が発生し、微量の静電気が発生する。では、これを防ぐにはどうすればいいのか。

 簡単な解決策のひとつは、毛ばたきや洗車後のから拭き・ワックスがけ時に、足元の地面を水でぬらすことだ。これには、人体にたまった電気を足元から地面に放電する効果があり、車内に静電気がたまるのを防ぐことができる。

 もうひとつの方法は、静電気防止グッズを使うことだ。専用のクロスやワックス、コーティング剤などでほこりを防ぐことができる。しかし、これらのアイテムは永久的な効果があるわけではない。クルマを普通に使っているだけでも徐々に静電気が発生し、ほこりがたまっていくのだ。

 静電気防止ではないが、ほこりを除去するには毛ばたきがやはり手軽で効果的だ。街中で見かけなくなったと思っていたが、意外と個人ユーザーが使っているようだ。クルマを傷つけずにほこりを落としたいなら、毛ばたきの使用を検討してみてはいかがだろうか。