鹿児島県鹿屋市のかのやばら園で11日、ウエディングイベントがあり、新婚と結婚1周年を迎えた夫婦各1組がそれぞれ人前結婚式と記念式を挙げた。同園を「恋人の聖地」に認定したドレスデザイナー桂由美さんが来園予定だったが、4月26日に94歳で急逝し、かなわなかった。参加者は桂さんへの思いを胸に、春バラに映える2組を祝福した。

 結婚式プロデュースなどを手がける「Luce+plus」(東京都)が企画した。代表で都内在住の新矢ヒカル(本名新屋光)さん(54)は父親が曽於市、母親が垂水市出身。数年前訪れたばら園に引かれ、「ルーツでもある鹿児島でウエディングを」と準備した。

 新矢さんは桂さんと長年交流があり、出演を持ちかけた。「突然の訃報で開催を迷ったが、桂さんに『絶対やり遂げて』と言われていた。遺志を継ぐため奮い立った」と実施を決めた。

 11日は晴天の下、園内のローズチャペル前で記念式、人前式の順にあり、2組は感謝の手紙や誓いの言葉を披露。最後はバラのフラワーシャワーを浴びながら、笑顔で退場した。

 記念式を挙げた公務員の湯之原孝実さん(29)と会社員の栞理さん(31)=垂水市田神=は「桂さんの訃報はさみしいけれど、満開のバラに囲まれて思い出になった」。人前式に臨んだ新郎新婦、作業療法士の園田征志さん(31)と主婦の麻未さん(34)=鹿児島市郡元3丁目=は、「デートで何回も足を運んだ場所。家族の喜んだ顔がうれしかった」と笑顔だった。