銀行口座の放置は危険だ、ということを元銀行員の筆者は主張したい。

預金は元本割れがない点で安心だが、超低金利時代、預けていていもお金は増えない。それどころかお金を預けっぱなしだと、ケースによっては不利益を被ることをご存じだろうか。

この記事では、銀行預金における3つのNG行為と、直近で使う予定のないお金はどう管理すれば良いのか解説する。

※この記事では便宜上、ゆうちょ銀行の「貯金」も「預金」で統一しています。

預金口座にお金を預けっぱなしにする

預金口座にお金を預けっぱなしにするのはNGだ。

預金口座は、現金の入出金や給与振込、公共料金等の引き落としには最適な口座ではあるものの、貯蓄の観点から見ると3つの大きなデメリットがある。

1:金利が極めて低い

マイナス金利の解除を受けたことで、2024年3月に三菱UFJ銀行は0.001%から20倍の0.02%にあげることを発表した。

その後、三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行・ゆうちょ銀行も4月から同水準に引き上げすることを決めた。

しかし、それでも100万円を1年間預けても利息は200円。そこから税金(20.315%)が引かれると利息は160円程である。

2:インフレで相対的にお金の価値が下がる可能性がある

足元では、原材料不足や人件費の高騰などの影響で、インフレが止まらない。

たとえば、車の価格は材料費や人件費の高騰により年々高騰しているため、車を購入するために300万円を銀行に預けていても、1年後には価格が上がり希望の車種を購入できなくなる可能性がある。

それを考えると、預金よりも運用益が大きくなる可能性のある投資で財産を増やすことも視野に入れるべきかもしれない。

長期間入出金等がない状態で預金口座を放置する

長期間(10年以上)入出金等がない状態で預金口座を放置すると「休眠預金」となり、通常の方法では預金を引き出せなくなる

また、今は口座を維持するための口座維持手数料を設ける銀行が増えているため、知らないうちに口座残高が減っている可能性がある。

そうなる前に、口座の所有者は以下の対応を行う必要があるのだ。

休眠預金になる直前に行うべき対応

通常、金融機関は動きがない口座が休眠預金になる直前に、口座の所有者にその旨を連絡して解約などの手続きを求める。

それに応じて口座の所有者が所定の手続きを行えば、自分の口座を休眠預金にせずに済む。

休眠預金になった後に行うべき対応

金融機関に氏名や住所変更の届出をしないまま口座を放置した場合、金融機関からの連絡は届かない。その場合は、知らないうちに自分の口座が休眠預金になる可能性が高い。

ただ、口座がある金融機関で所定の手続きを行えば預金が全額払い戻される可能性が高いので、口座の放置に気づいた時点ですぐ金融機関に連絡しよう。

子どもの「名義預金」で貯蓄した通帳をプレゼントする

孫や子どもの名義で銀行口座を開設し、祖父母や両親が貯蓄するケースがある。孫や子どもが大人になった時、サプライズとして貯蓄した通帳をプレゼントするなど目的は色々あろう。

しかしこの場合、孫や子どもの名義を借りた「名義預金」に該当する可能性がある。名義預金に該当すると、贈与税や相続税の対象になり、申告を忘れると無申告加算税などのペナルティを課されることもある

預金が名義預金と判断されないためには、預金している口座の印鑑や通帳の管理を贈与された人が行うことが不可欠である。

孫や子どもが大人になった時にサプライズでプレゼントしたい気持ちはわかるが、名義預金とされないためにも、孫や子どもに通帳の存在を明かし自由に使えるようにしておく必要があるのだ。

預金より投資でお金を育てる

今、手元のお金は銀行貯金に預けておくより投資で育てる、という時代になった。

おすすめなのがNISAとiDeCo。運用益が非課税になるという大きなメリットがある。通常、運用益には20.315%の税金がかかるため、例えば10,000円の運用益が出たとしても、2,031円は税金として支払わなくてはならない。

運用益が大きければ大きいほど税金も増えるため、運用益が非課税というのは大きなメリットだ。

NISA 

2024年1月から新制度が始まったNISA制度。今までの制度では、つみたてNISAか一般NISAのどちらかを選ぶ必要があったが、新NISAはつみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で240万円を併用して合計最大年間360万円(月に30万円)まで投資できるようになった。

たとえば月5万円を20年間積み立てれば運用益は633万円・資産額は1,833万円まで膨れ上がる(利回り4%)。

また、非課税保有限度額は合計1,800万円(成長投資枠は1,200万円)だが、保有期間が無期限になった。つまり、運用金額が1,800万円を超えない限り、一生非課税で保有が可能だ。

売却して枠が空けば、年間投資可能額の範囲で再投資もできる。投資初心者の場合、まずはつみたて投資枠でインデックスの投資信託に投資し、投資に慣れたら成長投資株で個別株も購入してみるのがおすすめだ。

iDeCo 

iDeCoは自分自身で年金を作るために積み立て・運用をするための制度だ。NISAと同じく運用益が非課税になるのに加えて、掛金が全額所得控除、給付金が公的年金等控除・退職所得控除を受けられるといったメリットもある。

お金に対する正しい知識を

昔と異なり、預金だけでは財産を増やせない。そのことを念頭に置き、預金と投資をバランスよく組み合わせて財産を増やしていくのがベストだ。

お金に対する正しい知識を持って運用すれば、老後のための資産形成もできるだろう。NG行為に気をつけ、ぜひ戦略的に貯蓄に取り組んでいただきたい。

文・勝目麻希(ファイナンシャル・プランナー) 新卒で総合職としてメガバンクに入行し、法人融資・金融商品販売等を担当。転職・結婚・出産を経て一時は専業主婦になったが、自分の金融知識や実務経験を活かしたいと独学でライターの道へ。現在はファイナンシャルプランナーの知識を活かして金融系メディアを中心に執筆。