「連休明けに、会社を辞めます」

4月は、新入社員の入社や部署異動など、何かとバタバタして忙しい時期だ。ひと段落する5月の連休、キャリアについてじっくりと考える人も中にはいるだろう。

中には、転職を決意する人もいるかもしれない。

しかし、新たなスタートに向けて気持ちが高まっているとしても、浮かれ気分で行動してしまうと後悔するので注意が必要だ。

今回は転職時に絶対にやってはいけないNG行為について解説する。また、転職時に注意したい各種税金や保険料の支払いについても解説していく。

■NG行為1 顧客情報や独自ノウハウ、技術の持ち出し

前職で業務上知り得た顧客情報や独自ノウハウ、技術などを不正に持ち出すことは厳禁だ。雇用契約を結ぶ際に受け取る誓約書や秘密保持契約書などに、守秘義務やその範囲の記述があるはずなので、一度目を通しておくといいだろう。

過去には、2021年にはソフトバンクの元社員が営業上の秘密を転職先である楽天モバイルへ不正に持ち出した疑いで逮捕されたことが明らかになった。2022年には、不動産会社の元社員が転職先の会社に顧客情報を不正に持ち出した容疑で逮捕されている。

■NG行為2 退職エントリーをSNSなどに投稿する

退職時に、前職での経験を整理して文章化しSNSなどに投稿する人がいる。これを通称「退職エントリー」と呼び、テック企業などで多い傾向が見られる。

退職エントリーは、秘密保持契約書における守秘義務に抵触しない内容であっても、勤務先の内情に多少なりとも触れる。したがって、前職関係者からの心証はよくないだろう。

退職エントリーを書くことは絶対にNGではない。しかし、どうしても書きたいのであれば、細心の注意を払うようにしたいものだ。

■NG行為3 退職をその直前に伝える

民法上では退職を申し出てから2週間後以降の退職が認められている。

したがって、法律を盾にとるのであれば、2週間前までに退職を伝えれば問題ない。

しかし、円満に退職するなら就業規則や雇用契約書の定めにあるタイミングで伝えるべきだろう。通常は1〜2ヵ月前までの申し出が定められている。

■転職する際の税金・確定申告の注意点

転職する際は、税金や確定申告についても注意しなければならない点がある。

●社会保険

国民全員が健康保険へ加入する決まりになっているため、退職して社会保険を脱退した後に空白期間を設けることはできない。

例えば、5月末退職で6月1日から新しい会社で働くような場合には、社会保険を切り替えるだけだ。しかし、空白期間ができる場合は注意が必要だ。

どの会社にも属さない期間は、国民健康保険に切り替えるか、今まで働いていた会社の社会保険を任意継続するか、家族の扶養に入るかを選択する。

●年金

年金に関しても、空白期間なく転職する場合は、会社が切り替えの手続きをしてくれる。

しかし、次の転職までに空白期間ができる場合は、年金に関する手続きが必要になる。国民健康保険に切り替える場合、同時に国民年金に切り替える手続きが必要だ。

●確定申告

次の転職先に就業するまでにブランクがある場合や、年末前に退職した場合、会社員から個人事業主になった場合は、自分で年末調整の代わりに確定申告が必要だ。

特に、転職で空白期間がある人は、所得税を払いすぎている可能性がある。その場合は、所得税の還付を受けられる可能性があるため、損しないためにも手続きを忘れないようにしよう。

文・勝目麻希(ファイナンシャル・プランナー)
新卒で総合職としてメガバンクに入行し、法人融資・金融商品販売等を担当。転職・結婚・出産を経て一時は専業主婦になったが、自分の金融知識や実務経験を活かしたいと独学でライターの道へ。現在はファイナンシャルプランナーの知識を活かして金融系メディアを中心に執筆。