山田孝之と仲野太賀がダブル主演を務め、白石和彌が監督する映画『十一人の賊軍』が、11月1日(金)に全国公開されることが決定。あわせてビジュアルが解禁された。

本作は「日本侠客伝」シリーズや「仁義なき戦い」シリーズ、『日本暗殺秘録』(69)などをなどを手掛け、東映黄金期の礎を築いた脚本家、笠原和夫が1964年に執筆した幻のプロットが、60年の時を経て映画化する集団抗争時代劇。日本アカデミー賞優秀脚本賞、さらに勲四等瑞宝章を受章している笠原は、脚本を通じて時代の反骨精神や都合によって変わる正義に抗う人物を数多く描き、昭和の映画業界を牽引。そんな巨匠が手掛けたプロットを、企画及びプロデュースの紀伊宗之と白石、脚本の池上純哉たち平成ヤクザ映画の金字塔「孤狼の血」チームが受け継ぎ、令和に新たな群像劇が誕生する。

今回のプロジェクトで主演を務めるのは、『凶悪』(13)、「闇金ウシジマくん」シリーズで苛烈な役を演じ抜き、ドラマ「全裸監督」、「忍びの家 House of Ninjas」では国内だけでなく、海外でも注目を浴びる山田と、『すばらしき世界』(21)、『四月になれば彼女は』(24)などに出演し、2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」の主演に決定している仲野。『50回目のファーストキス』(18)以来の共演となる2人が再び肩を並べ、死と隣り合わせの戦場を駆け抜ける。

舞台は1868年、「鳥羽・伏見の戦い」を皮切りに、15代将軍の徳川慶喜を擁する「旧幕府軍」と、薩摩藩と長州藩を中心とする「新政府軍=官軍」で争われた“戊辰戦争”。明治維新のなかで起きた内戦であり、江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わる激動の時代である。その戦いの最中、新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた歴史的事件、奥羽越列藩同盟軍への裏切り=旧幕府軍への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた11人の罪人たちが「決死隊」として砦を守る任に就く。笠原は「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉の通り、勝った方が正しく、勝敗によって善悪が決まるのが当たり前の時代に“はたして勝つことだけが正義なのか?”と一石を投じるべく、憎き藩のために命をかけて砦を守らなければならない罪人たちの葛藤を構想した。

しかし当時の東映京都撮影所所長、岡田茂は物語の結末が気に入らずボツに。怒った笠原は350枚ものシナリオを破り捨ててしまい、日の目を見ることのないままとなってしまったが、笠原が描こうとしたドラマはいままさに日本が抱えている社会問題とシンクロすると確信した現代の東映が企画、映画化。「孤狼の血」チームが旗を揚げ、山田&仲野の実力派俳優たちと権力への壮大なアンチテーゼに挑戦する。

1人のヒーローの活躍ではなく、チームワークで強大な敵に挑んでいく群像劇として、1960年代の東映が確立させた集団抗争時代劇。反骨の巨匠、笠原のメッセージを最旬キャストと気鋭クリエイターが令和によみがえらせた本作。今後の続報にも要注目だ!

■<コメント>

●山田孝之

「スタッフ、キャストの皆さんが何とか乗り越えようとしていたのが伝わってきて、大変だったけど楽しい撮影でした。先にクランクアップしたほかのキャストの皆さんが炊き出しに来ていただいたり、こんな素敵な現場は本当にないと思いますし、ここまで大変だったからこそ、何としてでもいい作品を作ろうと一丸となって撮影に挑んでいました。白石監督とは『凶悪』以来でしたが、変わらぬパワフルさについていくのに必至でした。ですがなにより、再度お声がけ頂けたことがとても嬉しく思いました。太賀とは共演経験もあり、彼の芝居に対する本気度は肌で感じていましたが、他者からの高い評価も日々聞いていましたので、改めてともに作品を作れる事がとても楽しみでした。そしてとても刺激的で、やり甲斐のある現場となりました。映画で描かれる賊どもの生き様が、観た人たちの心に届いて勇気づけることができるといいなと思っています。この映画を最後まで突っ走ろうと思います」

●仲野太賀

「撮影を終えて、これまでにない達成感があります。アクションシーンが多く撮影は過酷を極めましたが、360度どこを見渡しても壮大な世界観のセットという本当に贅沢な環境で芝居ができたことが、自分の俳優人生で初めてのことだったので幸せでした。殺陣は初めての挑戦だったのですが、どんなに大変なシーンでも信頼できるスタッフのみなさまのおかげで確実にかっこいい映像が撮れているという自信をもって最後まで走りきることができました。山田孝之さんには精神的にも体力的にもいろんな面で引っ張って支えていただきました。ほかのキャストの皆さんも、どんなに大変な状況でも笑いの絶えない空気を作ってくださり本当に感謝しています。僕も映画の完成を楽しみにしています!」

●白石和彌(監督)

「『昭和の劇』で笠原さんのインタビューを読み、プロットを手にしてから、あっという間に時間が経ちました。笠原さんの名に恥じぬようにと、いまこの映画を世に送りだす意義を考え、重圧に潰されそうになりながらも泥だらけになって撮影しました。たくさんの才能あるキャストとスタッフに集まって頂き心から感謝しています。どうか皆様楽しみにお待ちください。映画はもうすぐ完成します。完成したら、また笠原さんの墓前に手を合わせ、ご報告してまいります」

Q.主演2人のキャスティングについて

「山田孝之さんは『凶悪』以来でしたが、この作品の持つ力に太刀打ちできる俳優は彼だけだと思いお願いしました。10年ぶりの山田さんは俳優としても人としても、大きく心強い存在でした。仲野太賀さんは、最も仕事をしてみたい俳優の一人でした。愚直で正義感溢れる侍を見事に演じてくれています。これから日本を代表する大きな俳優になるんだろうなと思います。2人がスクリーンで暴れる姿を早く観てもらいたいです」

●紀伊宗之(プロデューサー)

「笠原和夫さんの残した『十一人の賊軍』に出会い、“コレだ!!”と思いました。この作品には歴史の狭間でもがく人間の熱いドラマが描かれていたからです。かつて『七人の侍』、『用心棒』はじめ日本の時代劇は、国内だけでなく海外でも高く評価され、誰もが知るハリウッド大作映画の基になるなど世界中のクリエイターやエンタメに影響を与えてきました。ずっと僕もそういう映画を企画し、作りたいと思っていました。また現代においても世界では侍や忍者といった日本固有の文化、歴史の人気は根強く、『ラスト サムライ』の世界規模での高評価に加え、ハリウッドでは忍者コンテンツが作られ続け人気を博しています。直近では『SHOGUN 将軍』、『忍びの家 House of Ninjas』が世界中で注目を集めています。日本独自の文化を基にしたコンテンツが世界で求められているのは普遍的なことではないでしょうか。“日本が世界と戦える映画とは、日本固有の文化に根ざした時代劇が一番”です。笠原和夫さんといえば日本映画界の伝説的な存在であり、その名を知らない人はいません。そんな大先輩である笠原和夫さんの反逆精神が宿るこの『十一人の賊軍』に、現在日本映画界最高のスタッフ、キャストが集まり、大変な制作現場を一丸となって走り抜けてくれています。まさにこれは奇跡です。完成した暁には世界に向けた渾身の作品になると信じてます!」

文/スズキヒロシ