政府が少子化対策として「産後ケア」事業の強化を図る中、長崎県佐世保市光月町の「つきやま産婦人科」(築山尚史院長)が利用促進に向けた取り組みを始めた。関連会社「TOG LABO」(須川英太社長)が、産後の女性と産後ケア機関をつなぐマッチングアプリ「産後ほっとLINE」を開発し、佐世保市を対象に6月からサービスを提供する。
 出産後の育児相談、授乳指導などの産後ケアについては、家族の支援不足、産後の生活環境の変化などを背景に近年、必要性が高まっている。政府は昨年6月、育児不安や心身に不調がある場合などと限定していた支援事業を「産後ケアを必要とする者」として、各自治体に事業推進を通知した。
 同病院などによると、事業は行政、民間主導で実施されているが、利用率は低い。産後ケアを知らない、予約方法がアナログなどといった課題があるという。こうした状況の中、アプリは行政の取り組みに連携しながら、利用者と産後ケア機関をマッチング。事業の普及につなげる。
 佐世保市の場合、産後ケアの補助事業を市内を中心にした産婦人科や助産院などの15施設に委託。訪問ケアと、3、7時間コースのデイケア、宿泊の種類がある(内容は施設で異なる)。訪問ケア、デイケアについては本年度から通算4回まで無料で利用ができ、市は活用を呼びかけている。
 アプリはこの各施設の産後ケアの利用状況が確認できるサービスで、アプリ上で各種ケアの予約ができる。施設側はインターネットの管理画面で対応。病床の稼働率が安定するなどメリットがある。
 アプリはライン上のミニアプリを使用。各施設で配布するチラシのQRコードなどから無料で登録できる。交流サイト(SNS)によるマッチング事業は、全国でも珍しい取り組みという。
 同病院ではニーズについての実証実験を、出産した患者510人を中心に、昨年6月から3月まで実施。掲示板や不特定多数が対象となるSNSなどで告知をしたところ、利用回数は279回に上った。前年の同じ時期は93回で大幅増。7時間のデイケア、宿泊の利用率が伸びる傾向にあった。須川社長は「周知することで利用が急速に浸透していった」と分析する。
 アプリ開発については、同病院の取引銀行の西日本シティ銀行佐世保支店を通じて、西日本フィナンシャルホールディングスのグループ企業で、DX関連業務を担当するイジゲングループがサポートをした。
 築山院長は「産後ケアへの理解を広げ、子育てがしやすい環境を整えたい。ゆくゆくは子育て情報も提供できるようなアプリにしたい。佐世保発のプロジェクトとして、ほかの地域も視野に発展させたい」と話している。