スクロールの子会社であるスクロール360は2024年3月末時点で、累計820社以上にEC・通販企業のワンストップ支援サービスを提供している。物流面の支援だけでなく、リピート購入を促進するよう商品に付加価値を付けたり、モールや越境などECの販路を増やしたりして、事業者の売り上げ拡大に貢献するという。サービスの強みや今後の方針について、専務取締役の高山隆司氏と営業推進部部長代行の黒崎裕子氏に聞いた。


――スクロール360が提供する「次世代CRM物流」とはどんなものか?

高山:在庫管理や出荷、商品登録といった代行業務に加え、顧客分析やECサイト運営といったマーケティングに関する支援もワンストップで提供する。

――物流面の強みは?

高山:通販事業を60年以上も手掛けてきた経験を活かした高品質の物流を提供している。自社WMS(倉庫管理システム)による管理で誤出荷率は0.0016%以下と、業界でもトップクラスの品質だ。全国4地区に物流拠点があるため、リスク分散や災害対応の分散出荷ができる。

「物流2024年問題」は2024年4月になった今、顕在化するのではなく、残業時間が積み重なった2025年3月に起こると見ている。当社の倉庫では、自動化と省力化により、配送キャリアドライバーの負担を減らしている。

――マーケティング面ではどのような支援をするのか?

高山:データ分析やマーケティング調査といったコンサルティングを行っている。

例えば、サブスクリプションの企業向けにマーケティング調査としてグループインタビューを実施した。新規顧客、解約した顧客、1年以上契約しているロイヤル顧客とグループ分けをして、それぞれに意見を聞き分析を行った。すると、「せっかくたくさん用意した同梱物が『多すぎるから』と読まれていない」「本当に知りたいことが書いてあるチラシが入っていない」といったことが分かり、適切な同梱物の提案などを行い、継続率を高めることができた。    

――顧客のファン化やリピート購入を促進するために支援していることは?

高山:商品の付加価値を高めるサービスを提供している。ワイシャツの袖丈詰めや金属タンブラーの名入れサービスなどを倉庫内で実施している。    

事業者はギフト商品で差別化したいというニーズが高い。ベビー用品に子どもの名前を刺繍で入れるなど、倉庫内での付帯作業を拡充することで事業者のニーズにこたえている。

グループ企業の株式会社キャッチボールが展開している「後払い」を事業者に提案している。カードと代引きしか支払方法がない事業者が、後払いを導入すると20~30%売り上げが拡大する。振込用紙を商品に同梱できるのも郵送料のコストダウンにつながり好評となっている。    

――ECショップの運営代行「ECACT」とは?

黒崎:2022年に開始した、EC・通販事業者向けのECショップ運営代行サービスだ。人材不足により、EC事業を立ち上げても担当は兼任となっているなど、負担が大きい。「ECACT」が立ち上げから運営までを柔軟に対応する。

競合調査や商品登録など、即時性が求められるが、作業量の多い実務を代行することで、売り上げの拡大に貢献する。

――「ECACT」の実績は?

黒崎:社内のリソース不足を課題としていた調理器具のECショップの運営を代行し、前年比約8倍の売上高となった。スクロールの通販事業の経験があるからこそ、スピーディーな対応や説得力ある提案ができた。

売り上げが伸びると、次の課題は出荷など物流面に出てくる。その場合はスクロール360の物流サービスを紹介し、立ち上げから成長までの全段階をサポートできる。「ECACT」で構築した信頼感があるので、継続して支援しやすいというメリットもある。

――越境ECの注目が高まっているが、どのような取り組みをしているか?

高山:中国への越境ECのサポートをしている。中国にある子会社・成都インハナと連携することで、中国サーバーのホームページ作成、中国のSNSアカウントの作成・運営、各種代理申請、中国工場での商品の仕入れサポートなどをトータルで支援できる。

スクロール360の他のサービスと組み合わせることで、日本向けの商品登録と中国向けの商品登録・中国EC進出のサポート業務をシームレスに対応することもできる。

――今後の展開について。

高山:最近は、「楽天市場」の配送品質向上制度に関する問い合わせが増えている。「楽天市場」が定める基準を満たして「最強配送」のラベルを取得するには、即日配送が必要で、店舗の負担が増す。2023年10月に提供を開始した受注処理代行サービス「土日祝対応プラン」では、土日祝日の出荷連携業務が可能だ。

これからも、事業者のニーズに応えるサービスを提供していきたい。