ラピダスなどに1000億円補助

経済産業省の半導体政策が新たなステージを迎えている。対象となるのはウエハーの切り出しや配線、検査といった半導体の後工程で、中でも超微細半導体の積層や光回路の活用といった、高い技術力を必要とする先端領域への支援が中心だ。後工程の素材や製造装置で高いシェアや技術を抱える日本。国際競争が激化している今、将来の競争力強化を見据え積極的な政策支援を打ち出す。(編集委員・政年佐貴恵、大川諒介)

※自社作成

韓国サムスン電子、NTT、回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)世代の次世代半導体量産を目指すラピダス(東京都千代田区)―。2023年末からの半年足らずの間に経産省が相次ぎ発表した支援で目立つのが、後工程にも重点を置く姿勢だ。3次元(3D)積層技術や、光回路と電子回路を高密度に実装する技術、2ナノメートル世代半導体の実装量産技術の開発など、いずれも先端後工程領域が対象で、支援額は計約1000億円に上る。

「後工程は性能や価格に大きく影響し、多彩な技術が世界で競われている」。経産省幹部は、先端後工程を支援する狙いをこう説明する。半導体の計算能力や効率などを左右する回路の微細化は、技術難易度が上がっている。ただ生成人工知能(AI)などデジタル技術の発展で、処理能力や消費電力の低減ニーズは、ますます高まっている。そこで半導体チップを積層し性能を高める後工程に、技術進化の方向が向いてきている。

主要な素材供給網を握る日系化学メーカーにとっても商機だ。複数材料でトップシェアを持つレゾナックは25年に米シリコンバレーで後工程用材料の開発拠点を新設するほか、国内では材料や装置メーカーなどからなるコンソーシアムを主催。「後工程や材料スペックが、半導体全体のデザインに密接に関わるようになっている」(真岡朋光最高戦略責任者〈CSO〉)とし、他社との共創を通じた次世代技術開発を加速させる。

技術面ではデバイスの性能向上のため複数チップを1パッケージに実装する「チップレット」が脚光を浴びる。同技術の進化で2・5次元(2・5D)、3D実装やチップと配線基板の間をつなぐ再配線層の多層化など新たなトレンドが浮上。前工程技術を生かせる場面も多く、幅広いサプライヤーに参入機会が見込まれる。

日本はかつて産業構造や技術の変化に乗り遅れ、半導体産業で負けた経験がある。経済安全保障の流れもあり各国の産業政策競争は高まっている。経産省は強力な支援でサプライチェーン(供給網)育成も含めて前工程から後工程までの自立を図り、“日の丸半導体”の復権を目指す。


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