ラ・リーガ1部のレアル・ソシエダに所属する日本代表MF久保建英(22)の獲得へ向けて、プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーが正式オファーを出したと、複数のヨーロッパメディアが15日までに報じた。さらにトッテナムの動きが引き金になり、以前から久保に関心を示していたリバプール、アーセナル、ニューカッスル・ユナイテッドが動く展開もありうると指摘。久保は2029年6月までソシエダとの契約があり、移籍には違約金が発生するが、今夏の移籍市場では、資金力のあるプレミアリーグ勢による久保の争奪戦が勃発する可能性が出てきた。

 2029年6月末まで契約が残り違約金は6000万ユーロ(約101億円)

 夏の移籍市場へ向けて、久保の周辺が騒がしくなってきた。
スペインの『FICHAJES.NET』とイギリスの『TEAMTALK』の両メディアが、久保の獲得を望むプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーが、所属するラ・リーガ1部のレアル・ソシエダへ正式なオファーを出したと相次いで報じた。
両メディアによれば、ソシエダへ提示された違約金は5000万ユーロ(約84億1750万円)。その上で『FICHAJES.NET』はトッテナムの狙いをこう伝えた。
「トッテナムは来シーズンに向けて攻撃陣の補強に乗り出し、ラ・リーガ1部でセンセーションを巻き起こしてきた才能豊かな日本人ウイングに狙いを定めた。ラ・レアル(ソシエダの愛称)で7ゴール4アシストをマークしている久保は、対戦相手の守備のバランスを崩す能力を含めて、ピッチ上で発揮する万能性でアンジェ・ポステコグルー監督の戦術的選択肢を確実に増やす。その意味でクラブにとって垂涎の的になる」
さらに『TEAMTALK』は「スパーズ(トッテナムの愛称)、ラ・リーガのスター獲得に向けてオファーを出した」とのタイトルとともにこう報じた。
「トッテナムは今夏の移籍市場で大きな計画を立てていて、ポステコグルー監督は特に新たなウイングの獲得に躍起になっている。スパーズはウイング候補のリストを作成し、そのなかからいま現在のラ・リーガで最もエキサイティングな若手選手の一人であり、日本代表にも名を連ねる久保の獲得へ向けて初めて具体的なオファーを出した」
2022年夏にレアル・マドリードから5年契約でソシエダへ完全移籍で加入した久保は、今年2月には契約を2029年6月末まで、さらに2年間延長した。契約解除条項として違約金6000万ユーロ(約101億円)が設定されている。
さらに前所属チームとなったレアル・マドリードは久保を送り出す際に、将来的に発生する違約金収入の50%をソシエダから得る権利と、同チームが久保の再獲得を望む場合には他チームに先駆けてソシエダと交渉できる権利を獲得している。
こうした状況を受けて、前出の『TEAMTALK』は「実際にトッテナムが久保を獲得するには、非常に大きなハードルがある」とこう続けた。
「しかし、ラ・レアルは久保が今夏に安値で退団する状況を許さないだろう。実際、トッテナムが提示した5000万ユーロの違約金は、ラ・レアルの期待には届かない」
今シーズンのラ・リーガ1部ですでに優勝し、UEFAチャンピオンズリーグでもウェンブリー・スタジアムで6月1日に行われる決勝進出を決めているレアル・マドリードが、今夏に久保の再獲得に動くかどうかは現時点でわからない。それでも、折半する違約金収入が目減りする状況に対しては、異を唱えてくる可能性が大きい。
それでも前出の『FICHAJES.NET』は、トッテナムからのオファーは「ラ・レアルにとってもチャレンジとなる」とも伝えている。
「スパーズからのオファーは、ラ・レアル理事会の最終的な決定に影響を与える可能性がある。設定されている違約金ではないにせよ、それでも多額の金銭的な利益を得られ、チームに不足する部分の強化に充てられる機会をも生み出す状況を考えれば、スパーズからのオファーを真剣に検討する可能性は排除できない。もちろん、ラ・レアルで自らの才能を開花させるための理想的な環境を手に入れた久保が、新たな挑戦とキャリアを発展させる機会を求めて、プレミアリーグに飛び込むかどうかもまだ不透明だ」

 久保に関する契約解除条項で定められた違約金は、2月の契約延長時に6000万ユーロのままで据え置かれている。契約期間の長さに応じて増額されるのが一般的とあって、スポーツ紙『AS』を含めたスペインメディアでは驚きを持って受け止められた。
6000万ユーロという金額は決して安価ではない。さらにはね上がれば、豊富な資金力を持つビッグクラブが久保の獲得を望んでも、二の足を踏む状況を生み出しかねない。久保側の意向かどうかはわからないが、この先にさらなる成長を遂げた久保がステップアップを望む余地を残すためにも、あえてハードルを上げなかったとも考えられる。
久保の獲得を検討しているクラブとして、前出の『TEAMTALK』はリバプール、アーセナル、ニューカッスル・ユナイテッドをあげてきた。そこへ割って入る形でトッテナムが具体的なオファーを出した影響を、同メディアはこう伝えている。
「今後に関しては数週間以内に、リバプール、アーセナル、ニューカッスル・ユナイテッドが、スパーズに対抗するオファーを出すかどうかが注目される」
3クラブのなかで特に注目されるのが、レジェンドとして活躍してきたエジプト代表FWモハメド・サラー(31)が来夏で契約満了を迎えるリバプールとなる。
サラーに対しては昨夏、サウジアラビアのアル・イテハドが獲得に動いたが、サラーの代わりを務める選手を獲得できなかった、という理由で破談になった。しかし、あきらめ切れないアル・イテハドは今夏に再び獲得に動くと報じられ、違約金として破格となる2億ポンド(392億6400万円)を用意する方針だという。
2億ポンドの収入か、それとも来夏に違約金なしで移籍されるかの二択で考えれば、リバプールとしても当然ながら前者を選ぶ。さらに巨額収入の一部を、同じ右ウイングの久保の獲得資金に充てられるだけに、同メディアは「リバプールの場合、サラーをサウジアラビアへ売却すれば、久保獲得の動きを強めるだろう」とつけ加えている。
いずれにしても、まもなく2023-24シーズンが閉幕を迎える段階になって、特に資金力のあるプレミアリーグ勢を中心に久保の周辺がにわかに騒がしくなってきた。
残り3試合となったラ・リーガ1部でソシエダは7位と、来シーズンのUEFAヨーロッパリーグ出場権を得られる6位のレアル・ベティスを勝ち点1差で追っている。
ただ、バルセロナとの前節を含めて、大事な直近の2試合でベンチスタートが続いた久保に対しては、移籍を見すえているのか、それとも依然として筋肉系のトラブルを引きずっているのかと憶測を呼んだ。久保がさまざまな意味で注目を集め始めたソシエダは16日(日本時間17日)、ホームのレアレ・アレーナでバレンシアと対戦する。