東北6大祭りを素材とした祭シアター「HANA」(8月3日開幕)の体験型試写会とメディア取材会が7日、都内で行われ、脚本・構成を手がけた横内謙介氏や振り付けを担当したラッキィ池田らが出席した。

「HANA」は東北6大祭を生かした、ドラマ性のあるノンバーバル(セリフのない)ステージ。秋田を拠点として70年の歴史のある劇団、わらび座の俳優陣が出演する。昨年に続いての上演となり、今年は8月3日から9日まで、あきた芸術劇場ミルハルで幕が上がる。

横内氏は「10年くらい前、まだ東京オリンピック見据えてインバウンドだとかで、ノンバーバルで何かできないかというトライもあって」と振り返り、「ノンバーバルの演劇って、ほとんど成功例がない。セリフのない舞台だと、ダンスやアクロバットを主軸に、映像とかで工夫をするんですけど、何か足りない。オリジナリティーの柱がない。これってものがないと、ノンバーバルで外国人の心を打つってできない」と説明した。

その上で「わらび座には宝がある。15年くらい前からお付き合いあるから知っていた。民舞も時々宴会でやってくれるんです。そこに何か新しい展開が必要だった」と述べた。セリフがない分、最初に渡した台本は10枚ほどだったという。「こっちは1行でいいですから。あとはお任せなんです。とっても楽だった」とジョークを飛ばしつつ、「すばらしいものになったと思います。まだまだいろんな手を尽くして、さらに良くなっていく部分もあると思うので、これからも皆さんの手で育ててくれればと思います」と伝えた。

ラッキィ池田は「今年の練習は3月くらいから。みんな汗流しながら、先輩たちがものすごく足がおかしくなるくらいやっているらしい。まだまだ若い子は甘いとか言って」と笑顔で明かした。その上で「お盆の時期には亡くなった人が帰ってくる、と言われてもいますし、『あそこで踊っているのはうちの亡くなった家内なんじゃないか』、とか思い起こせるような。脈々とつながっている」と表現した。

「現代と過去をつなげる脚本を書かせたら横内さんは天才。世界に誇れる」と絶賛。作品中ではコロナ禍のシーンなども登場し、「脈々とつながってきたものが何なのか見ればわかるような、伝わるようなシーンだと思います。僕的には自分で言うのもなんですけど、深いものになったと思います」とほほ笑んだ。

わらび座の俳優を代表して出席した渡辺哲は「昨年の秋田は異常に暑かった。それと同時に劇場の中も熱かった」と回想。コロナ禍を踏まえて「昨年お客さまと一緒に太鼓をたたいたり、ちょうちんを振ったりできたことがうれしくて。一体感を感じられた。さらに良くしていこうと思って、今頑張って作っています。また“熱い”秋田に来ていただければと思います」とアピールした。

全国でインバウンド需要が高まる中、あらためて同作の魅力を聞かれ、横内氏は「祭りって、明るい瞬間にも影が差していたりする。セリフがないので、私情を踊りや俳優さんのふとした表情で表さなきゃいけない。楽しいことばかりつなげていればいいわけじゃなくて、踊りの根底には精神があるということが大事」と答えた。「コロナのシーンだって、最初は明るい作品なのに必要なのかって話になった。でも、今があってこそ、昔の祭りにも意味がある。それが別のメッセージを持っていく。笑いの中にあるレクイエムを表現できるかもしれない」と続けた。

劇中ではコロナだけではなく、戦火で仲むつまじい人と引き裂かれるようなシーンも描かれている。横内氏は「やらないと、本来の祭りの明るいも表現できないと思った。悲しみ、苦しみも。それはラスベガスのアートサーカスショーでも知ったことです」と明かした。

わらび座演出の栗城宏氏、代表理事の今村晋介氏らも出席した。