<高校野球春季埼玉大会:花咲徳栄4−1熊谷商>◇準々決勝◇2日◇大宮公園

大学4年生は秋まで公式戦があっても、高校3年生は7月で実戦が終わることもある。この時期、NPB球団のドラフト候補選手への視察は高校生が優先される場合が多い。

高校通算22本塁打を放っている花咲徳栄の大型遊撃手、石塚裕惺内野手(3年)の視察に、NPB球団の編成幹部級の姿がネット裏に目立った。「プレーが堅実」との声がいくつか挙がった。大事そうに正面に入り、2度の併殺でも二塁手に下からトスしていた。

理由もあった。「瞬時の判断です。下が緩かったんで1個ずつ丁寧に、という部分で下からいきました。ミスなくできたのは良かったと思います」と石塚。朝方までの雨で、試合開始が予定より1時間遅れた。グラウンド状況を鑑み、落ち着いての対応を心がけた。

打席では逆にそれを生かす。初回の第1打席、スライダーをしっかりインパクトし、左前へ。左翼手の一瞬のもたつきを見逃さず、二塁を陥れた。

野村佑希(日本ハム)井上朋也(ソフトバンク)とドラフト上位指名の右打者を輩出してきた同校。岩井隆監督(54)は「芯に当てる能力は石塚の方がある。あまりミスショットがない」とみている。

だからこそ警戒される。3回2死二、三塁の第2打席と、7回2死一、三塁の第4打席はいずれも申告敬遠となった。「そんなに警戒されるかー、って思ったんですけど」と苦笑い。6回まで0−0の試合。7回は申告敬遠の直後、満塁の好機。遊撃への強いゴロに「うまくスタートできました」と二塁での野選を勝ち取り、先制点に。塁上で強くこぶしを握った。

堅実だけれど、まだ高校生。最初の申告敬遠直後の第3打席、変化球をうまくすくい切れずに左飛に。「(敬遠後で)やっぱり打ちたい打ちたいってなって、レフトフライに打たされてしまって。考えが幼稚で。反省点です」と自分をしっかり戒めた。

準決勝進出を決めたこの日は3打数1安打、2敬遠。未完成な部分も見せながら、高い技術も示した。ヤクルト小川淳司GM(66)は「2つの敬遠、それだけの雰囲気がある打者ですよね。バランスが取れていて将来が楽しみです」と評価。西武潮崎哲也スカウトディレクター(55)は「中距離ヒッターで、アベレージを残せるタイプになれると思います」とイメージしていた。【金子真仁】