高校バレーボールの女子で「高校3冠」を過去2度達成した東九州龍谷高(大分)が6日、大分県中津市のダイハツ九州アリーナで福岡大と交流試合を行った。入学式を9日に控えた「新1年生」もデビュー。中でも年代別日本代表のエースで、昨年12月の「全国都道府県対抗中学大会」でも最優秀選手に選ばれるなど、将来の日本代表入りを期待される忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)は足がつるアクシデントにも負けずに持ち前の強打を披露した。試合(5セットマッチ)は、忠願寺の姉でキャプテンの風來(かえら)の活躍もあり、東九州龍谷高がセットカウント3―2(25―21、21―25、25―18、23―25、15―11)で競り勝った。

 攻撃の柱であるオポジット(セッター対角)に入ったスーパー1年生のサウスポーが「あいさつ代わり」で魅せた。長い手足をしなやかに使ったスパイクでフルセット勝利に貢献。「最初は緊張して思うように動けませんでしたが、最後は気持ちがしっかり入って、自分のプレーができました」。伝統ある「東龍」のユニホームで躍動した15歳が初々しい笑みを浮かべた。

自己採点は「30点です」

 自己採点は「30点です」と控えめだった。というのも両ふくらはぎがつり、第3セットの途中から一時コートを外れたからだ。「2セット目の途中からつりかけて、最後歩けなくなったので…」。ベンチでは3年生の先輩から両足をほぐしてもらうなど入念なケアを受け、第4セット終盤から再びコートイン。最終第5セットは悔しさを晴らすように、自分に上がったボールをことごとく決めた。9―9の勝負どころでは自らのスパイクが呼び水となり、3連続得点で福岡大を一気に突き放した。「(3月に)入寮して、チームの練習に加わってから実質10日間ぐらいですからね。100点満点ですよ」と相原昇監督はうなずいた。

 女子日本代表ミドルブロッカーの荒木彩花(久光スプリングス)を擁して頂点に立った2019年度の全日本高校選手権(春高バレー)を最後に全国優勝から遠ざかっている。そんな東九州龍谷高にとって、年代別代表の大黒柱で「中学ナンバーワンアタッカー」と評された莉桜の加入は戦力面だけでなく、チーム全体のバージョンアップを含めて好影響を与えている。

試合中に相原昇監督から指示を受ける忠願寺莉桜(左から5人目)ら東九州龍谷高の選手たち。右端が途中出場で活躍した梅木南

 この試合、莉桜と交代で出場した2年生アタッカーの梅木南は身長150センチ台と小柄ながら、俊敏な動きでライト側からの攻撃を担い、同じく2年生で速攻を交えたトスワークが光るセッター楢﨑杏菜とともに苦しい時間帯を支えた。2人は8連覇を達成した2月の全九州選抜高校大会のメンバーでもある。有力な1年生の存在が高いレベルでの競争を可能にした。

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 全日本大学選手権(インカレ)で2年連続3位の福岡大を向こうに回し、堂々と渡り合った。「福大さんのブロックを見て、手の出し方に『魂』を感じました。通り一遍の攻撃では厳しい。ギアチェンジや選手交代…いろいろな引き出しが必要なので、そういう意味でも、総力戦で勝ち切れたのは自信になります」と相原監督は大粒の汗をぬぐった。自他共に認める熱血漢が「私が言うのもあれですが、彼女は闘将です。感情をむき出しにして引っ張る姿勢がチームの士気を高めてくれている」とたたえるのがキャプテンの風來だ。

「お姉ちゃんと一緒にいいパフォーマンスを」

 この試合でもブロックや速攻、ライト側へ開いての強打など前衛で体を張り、第5セットに3点差でマッチポイントを握ると、会場に響くような大声で「私が決める! (ボールを)持ってきて!」と叫んだ。勝利への執念を燃やす姉の姿に、妹の莉桜は「ちょっぴり怖いけど…」と笑顔で前置きした上で「いつも励ましてくれますし、尊敬しています」と感謝した。

試合中に相原昇監督から指示を受ける東九州龍谷高の選手たち。左から5人目がキャプテンの忠願寺風來

 ダイハツ九州アリーナは今夏の全国高校総体(インターハイ)でバレーボール競技のメイン会場となる。そのコートで「高校デビュー」を飾った莉桜が新たな誓いを立てた。「お姉ちゃんと一緒にいいパフォーマンスをしたいです。試合を通してずっとプレーし続けられる体づくりも頑張ります」。身も心もエンジン全開。忠願寺姉妹の熱い一年が始まった。
(西口憲一)

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マスコットキャラをデザイン

 忠願寺風來(ちゅうがんじ・かえら)2006年11月13日生まれ。大分市出身。ポジションはミドルブロッカー。同市の舞鶴小3年から「東大分ジュニア」でバレーボールを始める。同市の稙田(わさだ)南中では3年時に大分選抜チームで「全国都道府県対抗中学大会」に出場。大分・東九州龍谷高では2年時の24年2月に開催された「全日本ジュニアオールスタードリームマッチ」に出場。3月には同学年の秋本美空(東京・共栄学園高)らとともに「全国高校バレーボール男女選抜強化合宿(3次)」に参加。母真麻さん(41)によると「字を書いたり、絵を描いたりするのも好き」で、父貴博さん(43)が指導する中学生女子のバレーボールクラブチーム「Vigare(ヴィガーレ)大分」のマスコットキャラクターもデザインした。身長177センチ。最高到達点は293センチ。

忠願寺風來がデザインした、中学生女子のバレーボールクラブチーム「Vigare(ヴィガーレ)大分」のマスコットキャラクター(家族提供)

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 忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)2008年8月24日生まれ。大分市出身。ポジションはオポジット。同市の舞鶴小1年から「東大分ジュニア」でバレーボールを始める。同市の稙田(わさだ)南中では、3年時の23年7月に中国で開催された「第1回アジアU16女子選手権大会」で年代別日本代表のエースとして優勝に貢献。大分県選抜チームを準優勝に導いた同年12月の「全国都道府県対抗中学大会」では女子の最優秀選手に選出された。全国中学生選抜メンバーで臨み、優勝した24年2月の国際大会(イタリア)ではキャプテンを務め、MVPに輝いた。憧れの選手は、東九州龍谷高の先輩で16年リオデジャネイロ五輪日本代表のサウスポーアタッカー長岡望悠(久光スプリングス)。身長180センチ。最高到達点は297センチ。