次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれたリアルバンド・Morfonica(モルフォニカ)が4月14日、東京・Zepp DiverCity (TOKYO)で『Morfonica Concept LIVE「forte」』を開催した。

 ライブタイトルの『forte』は、“強く”を意味する音楽用語。Morfonicaは、昨年7月から行った約2年ぶりの東名阪ツアー『Morfonica ZEPP TOUR 2023「forte」』や、昨年12月にリリースしたミニアルバム『forte』にもこのワードを冠し、バンドメンバー5人それぞれの個性や背景をつまびらかにしていた。

 この日のライブは、疾走感あふれるサウンドと美しいコーラスが印象的な「ハーモニー・デイ」で開幕。「ごきげんよう、Morfonicaです。きょうは楽しんでいきましょう」というましろ(CV:進藤あまね)のあいさつを合図に、メンバー全員が笑顔でアイコンタクトを取る「ブルームブルーム」や、客席を巻き込んだ振り付けも目を惹く「メランコリックララバイ」などを立て続けに披露し、ハードな音像にポップネスを組み合わせる独自の世界観を構築した。

 さらに、4曲目には5月1日発売の6thシングルから表題曲「両翼のBrilliance」も初披露。テレビアニメ『カードファイト!! ヴァンガード Divinez』のエンディングテーマとして書き下ろされた楽曲でありながら、Morfonica自身のストーリーや心情にも重なるメッセージが紡がれていることで、演奏自体にも一層の熱が込められ、ファンの興奮も高まっていった。

■突如として激変する世界観 会場を飲み込む“黒いオーラ”

 新曲「両翼のBrilliance」を披露した後、突如としてステージに紗幕が下り、アニメやスマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』で描かれてきたバンドの微笑ましいストーリーが次々に投影された。しかし途中から映像が乱れ始め、徐々に不穏な雰囲気に…。メンバーそれぞれが抱える不安や迷い、悩み、フラストレーションなどがあふれていった。

 そして、つくし(CV:mika)と瑠唯(CV:Ayasa)の秘めたる思いを吐露する語りが挟み込まれ、メンバーはキービジュアルにも描かれたシックな衣装を身にまとって再登場。5人の顔に先ほどまでのハジける笑みはなく、ミニアルバム『forte』収録の「フレージング ミラージュ」「esora no clover」が投下された。

 ミニアルバム『forte』は、初めてメンバー個人にスポットが当てられた作品であり、キャラクター1人ひとりの性格や背景を曲ごとに落とし込んだ1枚。ゆえに、ダークさや儚さを前面に押し出し、従来のバンドのイメージと一線を画すゴシックメタル調が軸に据えられていた。

 その作品の世界観を体現するというコンセプトに沿い、中盤セクションからはヘヴィネスとドーム感、耽美性が描き出されていく。それは『forte』の収録曲のみならず、これまでのライブでも披露されてきた「unravel」「アゲハ蝶」といったカバー曲でも貫かれた。

■洗練感を見せつける演奏 演者を支える楽器群

 1人ひとりのバックボーンにフォーカスした楽曲が繰り出されていく中、リアルバンドとしてステージに立つキャストたちの演奏も一層熱を帯び、洗練感を増していく。

 つくし役のmikaは、CANOPUS製刃II Groove kit(バスドラム22”、タムタム10”&12”、フロアタム16”)と同シリーズ製バーチシェルのスネア(14"×6.5)、トルコ発のハンドメイドブランド・ELLIS CYMBALS製シンバル(ハイハット14”、クラッシュ18”&16”、スプラッシュ10”、ライド20”、チャイナ18”)を起用。

 アンサンブルに絶対的な安定感をもたらすビートを叩き出しながら、楽曲のフックとして機能する複雑かつ高難易度のフィルインでも魅せた。

 瑠唯役のAyasaは、ルーマニアのハンドメイドメーカー・Gliga製のカスタム5弦バイオリンを用い、Morfonicaのアイデンティティーとも言えるバイオリンサウンドを創出。本器の駒は100年以上の歴史を持つフランスのデスピオ社の逸品で、駒の下に搭載されたピエゾピックアップ(Fishman製V-300)とともにバイオリン特有の箱鳴り感を生み出す。

ライブ中には、カーボン製の弓・Coda Bow Diamond SXをタクトのように振るい、観客をアジテートする場面もあった。

 七深役の西尾夕香は、ESP製コラボレーションモデルのBOTTOM BUMP PJ NANAMIを手に、多彩なベースプレイを提示。七深にフォーカスした楽曲「わたしまちがいさがし」では、特異なコード進行の上で縦横無尽なフレージングを紡ぎ出し、新曲「両翼のBrilliance」では、従来の質感と異なる音色でスラッププレイも披露した。

 アンプはこれまでと同様にMarkbass製Little Mark Vintage(ヘッド)とStandard 104 HF(キャビネット)の組み合わせ。足下にはMXR製bass d.i.+(DIボックス)、BOSS製EQ-200(グラフィックイコライザー)、Bass Comp BC-1X(コンプレッサー)を並べ、MS-3(マルチエフェクツスイッチャー)で統括していた。

 透子役の直田姫奈は、ESP製コラボレーションモデルのARROW FR TOKOを起用。スルーネック仕様のメイン、ボルトオンジョイント仕様のサブが用意されており、いずれもピックアップがSeymour Duncan製SH-2n & SH-10b FULL SHREDに換装されている。そんな同器のブライトなサウンドを活かし、歯切れのいいコードストロークからダイナミックなソロまでを弾きこなした。

 アンプは従来通り、ORANGE製TH100(ヘッド)とPPC412(キャビネット)の組み合わせ。足下には、音色作りの軸となるGT-1000CORE(ギターエフェクトプロセッサー)を中心に、RV-6(リバーブ)、『ブルーム ブルーム』の間奏で使用されるPS-6(ハーモニスト)など、BOSS製ペダルが並ぶ。

 ましろ役の進藤あまねは、SHURE製KSM9(コンデンサーマイク)にハンドヘルド型のワイヤレストランスミッター・UR2を装着。発する声質までもガラッと変化させた本ライブだったが、ライブ用として開発された同機の堅牢性と、繊細な響きを鮮やかに描き出す音質を武器に、あらゆる楽曲のメロディーと言葉をしっかりと届けきった。

■ダークな世界観を維持しながらヒートアップ

 七深(CV:西尾)が“ギフテッド”だからこその悩みを明かした「わたしまちがいさがし」などを経て、ナノのカバー曲「Nevereverland」からはアップテンポな楽曲へなだれ込んだ。そして、前ツアーファイナルで本編のラストを飾った「誓いのWingbeat」をラストスパートへの起爆剤として配置するという選曲、セットリストの妙でも魅了する。

 透子(CV:直田)の固い決意と孤独感の告白からスタートした「MUGEN Reverberate!」からはまさに怒涛。あふれんばかりの熱意を表現する「flame of hope」が“痛み”を抱えて前へと進む決意の楽曲に変わり、仲間との絆を確かめる「Ever Sky Blue」が深い闇の中に差す一条の光として映るなど、このコンセプトライブならではの“表情”も提示。

 そして、ましろ(CV:進藤)が心の内に抱えた劣等感を独白し、自身への嫌悪感を表出させる。しかし「私も変わりたい。何者かになりたい」とつぶやき、「きょうもMerry go rounD」でライブは締めくくられた。

 約1時間半、全15曲のパフォーマンスで“己の弱さ”と向き合ったこの日の『forte』。最後には切なげな弦楽奏の音色が響く中、ましろは膝からくずれ落ち、閉ざされた扉に向かって手を伸ばした。そして閉幕後、10月12日に次なるコンセプトライブ『Morfonica Concept LIVE「ff」』の開催が決定。前ツアーでバンドとしての強さと課題を手にし、今回のライブで自らの傷や痛みを自覚した5人は、より強い絆とアンサンブルとともに次なるステージへと向かう。

■『Morfonica Concept LIVE「forte」』セットリスト
01. ハーモニー・デイ
02. ブルームブルーム
03. メランコリックララバイ
04. 両翼のBrilliance
05. フレージング ミラージュ
06. esora no clover
07. unravel
08. わたしまちがいさがし
09. アゲハ蝶
10. Nevereverland
11. 誓いのWingbeat
12. MUGEN Reverberate!
13. flame of hope
14. Ever Sky Blue
15. きょうもMerry go rounD

■『Morfonica Concept LIVE「ff」』日程
10月12日(土) 河口湖ステラシアター
チケット最速先行抽選申込が受付中。
申込券はMorfonica 6th Single「両翼のBrilliance」初回生産分に封入。
受付期間:5月1日(水)午前10時〜6月24日(月)午後11時59分