梅雨時期に植栽を彩るアジサイ。近年は色や形、大きさが多様になり、鉢植えは母の日の贈り物としても人気が高まっている。

アジサイの育種と栽培を行っている「大栄花園」(千葉県成田市)では、母の日(今年は5月12日)に向けた栽培を急ピッチで行っている。今年は約6万鉢を出荷する予定だ。

アジサイは咲き方によって、半球状になる「手まり咲き」と、中心部の小さなつぼみ状の花の周りを、がくが取り囲んで咲く「がく咲き」がある。それぞれ一重咲きが一般的だったが、最近はがくが重なって咲く八重咲きや、がくがフリルのようになったものなど、見た目が華やかな品種が生まれている。

「開発技術の発達で品種が増えている」と園の代表で育種家の高橋康弘さんは言う。園のオリジナル品種で淡い青色の八重咲きが印象的な「空海」などを母の日向けに出荷した。高橋さんは「剪定方法などの注意点を守ると長く楽しめるのも魅力です」と話す。

色や形も様々だ。「青や紫、ピンクだけでなく、緑や白など色の種類が多くなった。ピラミッド形に咲くノリウツギやカシワバアジサイなども人気です」と青山フラワーマーケットの広報担当者は話す。

母の日のギフトの予約も受け付け中だ。オーソドックスな手まり咲きのピンクや青が人気で、1鉢5000円台が中心価格帯。子どもの拳程度の大きさに咲くコンパクトなものもあり、多彩だ。

ギフトの鉢植え需要が落ち着くと、初夏に向かって緑や白など爽やかな色合いの切り花が増え、秋口からはくすんだ色合いのものも出回るという。「様々な色を季節や場面に合わせて楽しめるのも特徴。切り花は1本500円程度から購入できて、手頃です」と話す。

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生産県では品種改良への取り組みが盛んだ。

栃木県は3月末、「ポップシリーズ」と名づけた八重咲きの新品種を3種、発表した。いずれもピンク色がベースで、赤い縁取りが特徴的な華やかなものだ。同県のアジサイ出荷量は全国有数で、消費者人気が高まっている八重咲きの品種の開発に力を入れている。

同県農業総合研究センターの担当者は「母の日のギフトとして需要が安定してきた。生産者の経営安定にもつながるため、育種や生産に力を入れている」と話す。3種は4月下旬から出荷が始まり、6000鉢程度の販売を見込んでいる。

島根県も今年、オリジナルで6品種目となる新顔「月うさぎ」の出荷を開始した。白色で、ウサギの耳を思わせる細身のがくが特徴の八重咲きアジサイだ。同県が開発した品種のうち2品種は花の新品種コンテスト「ジャパンフラワーセレクション」の鉢物部門で過去に最高賞を受賞するほど評価されている。出荷量も2019年の11万鉢から昨年は13万鉢まで増えた。

同県産地支援課の担当者は、「生産者も独自に研究会を設置するなど、アジサイ人気は花卉業界の活性化にもつながっている」と話す。(読売新聞生活部 上原三和)