このところ、お祓いした方がよいのでは、というニュースが続いているイギリス王室。チャールズ国王の死亡説まで拡散されていました。そして、国王と同じ時期に入院し、腹部の手術をしてから療養中のキャサリン妃を案じる声が高まり、陰謀論にまで発展――。

最後に公の場に姿を現したのは、昨年のクリスマス礼拝。パパラッチに撮られた不鮮明な写真や動画が出るたびに影武者説が囁かれました。

キャサリン妃について臆測や陰謀論が広がる中、キャサリン妃の名前と「コンスピラシー(陰謀)」を合わせた「ケイトスピラシー」という言葉まで生まれました。きっかけとなったのは、3月に公開された家族写真。キャサリン妃を囲んで、ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子が笑顔で写っている、幸せそのものの1枚です。

素人目にはわからなかったのですが、画像編集ソフト「フォトショップ」ユーザーたちが加工だと思われる箇所を指摘し、通信社各社が配信を取り下げる事態に。キャサリン妃の右手がピンぼけしている、シャーロット王女の袖の一部が欠けている……など16か所もの疑わしい部分が指摘されています。さらに、キャサリン妃のお顔自体も、8年前のファッション誌「VOGUE」の表紙写真を合成したという説が出て、今のご体調を懸念する声が高まりました。ルイ王子が右手の中指と薬指を交差させているのも「無事を祈る」というハンドサインに見えてきます。

不安を打ち消すかのように、この写真をネタにした大喜利的な画像を投稿する人も出現。くまのパディントンがキャサリン妃の膝に乗っていたり、真ん中にアメリカの政治家が座っていたり……。微妙な内容です。また、不在にまつわる様々な噂も。ブラジリアンバットリフト手術(ヒップアップの整形手術)を受けたとか、ウィリアム皇太子が不倫して夫婦仲が悪化したとか、言われ放題です。

キャサリン妃は写真が混乱を引き起こしたことについてSNSで謝罪しました。王室御用達効果か、フォトショップを販売しているアドビの株は急騰。手作り感あふれる加工画像も、味わい深く見えてきます。

その後、キャサリン妃はがんの治療中であることを発表。少しでも元気な姿を見せたいという女心が画像加工の動機だったのでしょう。陰謀から回復への願望へ……世の中の空気が変わったのが感じられました。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)