唐津中で稽古をつける横綱・双葉山(個人所蔵・1939年11月ごろ撮影)

 双葉山は1939(昭和14)年に69連勝を達成した不世出の大横綱です。唐津にも来たことがあり、当時の唐津中(現在の早稲田佐賀中高の場所)で相撲部の生徒に稽古をつけていると思われる写真があります。周囲をぐるりと囲んだ坊主頭の子どもたちの姿に熱狂ぶりがうかがえます。

 この大記録は85年たった現在でも破られていません。近年では2010(平成22)年に白鵬が「63」まで連勝を伸ばしましたが、わずかに及びませんでした。

 双葉山は記録を達成した年の11月に唐津を訪れ、相知町久保の幡随院長兵衛(ばんずいいんちょうべえ)生誕地の碑の除幕の綱を引いたという記録が残っています。おそらくその時に唐津中を訪問したのではないでしょうか。

 幡随院長兵衛は本名を塚本伊太郎(つかもといたろう)といい、唐津藩士・塚本伊織の子といわれています。江戸時代初期の侠客(町奴の頭領)の元祖ともいわれ、意地と面目を通した死に際の潔さで「江戸の華」とうたわれ、歌舞伎や講談の題材にもなりました。

 大横綱・双葉山と幡随院長兵衛。生きた時代や文化は違いますが、その男気には共感するものがあり、今後も語り継がれていくものでしょう。

(まちはミュージアムの会)