修復された磁器製狛犬の阿形像=有田町の陶山神社

 すでにご承知の方も多いかと思うが、陶山神社の磁器製狛(こま)犬が、ほぼ1年ぶりに里帰りし、元通り拝殿の前で参拝客を迎えている。

 1887(明治20)年に、神事当番町の赤絵町によって奉納されてからすでに140年近く。狛犬自体の欠損や汚れもひどく、台座もあちこちが欠けてちょっと痛々しい感じであったため、昨年5月、修復すべくはるばる京都の業者の元へと旅立ったのである。新たにきらびやかな絵付けも復刻された。

 狛犬は、もともと仏教とともにインドからシルクロードを通り、中国などを経由して、仏像の前に2頭の獅子を置く習慣として日本に伝わったという。つまり、正確にいえば、当初は「狛犬」ではなく「獅子」である。しかし、平安時代には阿形(あぎょう)の獅子と吽形(うんぎょう)の狛犬の組み合わせに変わり、鎌倉時代には獅子と狛犬ではなく、一対で狛犬と呼ばれるようになった。

 もともと狛犬は、頭に一本の角を持ち、耳が立って直毛という特徴があり、角がなく、耳が寝て巻き毛の獅子とは形状の違いがあった。近世になると阿吽の違い以外には、ほぼ左右の像に差がなくなったが、現在狛犬と呼ばれて親しまれるものは、実は姿としては狛犬ではなく、角のない獅子の方なのである。(有田町歴史民俗資料館長・村上伸之)