毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」! 今回は、千葉県夷隅(いすみ)郡御宿(おんじゅく)町『月の沙漠記念公園』からお届けします。

ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

童謡『月の沙漠』ゆかりの公園

「月の沙漠記念公園」ってことはさ、当然童謡の『月の沙漠』と関係あんだよね?

—— はい。御宿町の資料によると、作者である加藤まさをさんはこの御宿海岸の砂丘を見て詩を書いたそうです。

そうなんだ。俺の大正生まれのばあちゃんがこの歌を好きでさ。子供の頃、俺を寝かしつけるときとかに歌ってくれてたんだよね。「♪月の沙漠を〜 はるばると〜」って。今思い出した。ここはこの海沿いにウロウロあてどなく歩いたりするのもいいんだろうね。外房線に乗って来て、ここの周りにあるロッジとかに泊まったりしてさ。騒がしくないというか、かなり静かな場所だよね、ここ。

—— ですね。でも人が全然いないわけじゃなく、サーフィンしている人とかもいるんですけどね。外房のほうまで来ると海の感じもひと味違いますね。

砂もサラサラだし、なんか海も黒くない感じだよね。さっき川を渡ってきたけどさ、そこの水も意外にきれいだったもんね。この公園は、もうひたすらこの海岸が続く感じ?

—— いや、いくつかスポットがありまして。まずはあちらに「月の沙漠記念像」があります。

この月の形したやつか。「『月の沙漠』は、1923年青年詩人加藤まさを氏によって御宿のこの砂丘で綴られた。そのことを永遠に記念するために御宿町民がこぞってここに記念像と詩碑を建てる。らくだに乗った王子と姫が美しい御宿海岸のシンボルとして多くの人に愛される事を祈ってやまない。1969年7月吉日 御宿町」。なるほど。それでこういう男女とラクダの像の仕上がりなのか。

—— こっちに歌碑もあります。加藤まさをさんの経歴も書いてありますね。どうやら静岡県のご出身だったようで。

本当だ、藤枝の人じゃん! 晩年は御宿に住んでたんだね。25歳で月の沙漠を書いたのか。加藤さんにしてみたらさ、荒涼とした風景に見えたんだろうね、その時の御宿海岸はさ。しかしここって本当に砂がきれいだよね。ゴミも全然落ちてない。

—— トラクターみたいなのがあるんで、アレで手入れしてるんでしょうね。裸足で歩いても大丈夫そうですよね。

そうね。あのゴミをこし集めるやつを連結させて海岸を走らせてるんだろうな。でも真夏のハイシーズンはラクダの横でビキニのお姉ちゃんとかがキャーとか言ってたりするわけでしょ? 誰でも使えるビーチバレーのネットもあるし。公園としての見どころとしては、これでおしまい?

友人と話で盛り上がるより、ボーっとしに来る楽しみ

—— もうちょっと砂浜の奥の方に行くと、「ONJUKU」と書かれたモニュメントもあるみたいですね。

そういうの、やっぱ作っちゃうんだな(笑)。じゃあそこまで散歩してみよっか。こうやって歩いていて思うんだけどさ、ここは夏に来たらもちろん楽しいと思うよ。でも、今日(1月の中旬)みたいな、穏やかで風がなくて、天気がいい冬のこの感じもすごくいいよね。東京から近いきれいな砂浜っていうとさ、こっちの千葉のほうになっちゃうじゃない。そりゃサーファーの人たちがやって来るわけだわ。リゾートマンション的なとこもあるみたいだし。御宿って、それこそ昭和の頃のひと夏の経験をしに行くみたいな感じの場所だったんじゃないの?

—— 明治・大正期は、学生の卒業旅行が外房だったりしたみたいですね。

なるほど。でもここ来たら、ベラベラ喋しゃべるっていうよりも、黙々と海沿いを歩くのがいいかもな、1時間ぐらいかけてさ。みんなで海眺めてボーッとしに来る感じ。部活の合宿とかで来て、気合い入れて朝のランニングとかもいいんだろうけど。

—— 「ONJUKU」のモニュメント、ありました。

なるほど、こういう感じか。隣接してるウォーターパークみたいなのも見かけたから、夏はそういう施設営業もやってるんだよね? かき氷とか売ってそうな売店の建物もあったし。夏は夏でちゃんと人が集まって商売もやってそう。

—— あっち側にサボテンのモニュメントもあります。「Amigo Onjuku」という名前なんだそうです。

そっちも行ってみようか。あー、これはこれで絵になるな(笑)。こっちからがビーチへの正しい入り口なんだろうな。みんなこのサボテンを目掛けて続々と集まってくる、と。このサボテンと写真撮ると、何か裏寂しくていい感じだわ。この公園の周りも歩いてみようか。

—— いいですね、お店もありますし。

しかし、のんびりしていていいな〜。何度も繰り返しちゃうんだけどさ、ここは夏が絶対メインなわけじゃんか。でもこういう静かな御宿もまたいいっていうか。

—— あっ、勝浦タンタンメンのお店がありますね。外房では有名なご当地B級グルメです。ランチしていきます?

じゃあ、せっかくだからテイクアウトして公園で食べよう。どこか食べられそうな場所を探しておくからさ。

—— じゃあ買って持っていきますね。

よろしく。え〜っと、ビーチバレーのコートのそばにおあつらえ向きにドラム缶が横たわってる(笑)。ここに座って食べようかな。

—— 瀧さん、買ってきました〜。

ありがと! いいね、このアジアのリゾート感。じゃあいただきます。うん、旨い! 辛いんだけど、ちょっと甘めのおつゆ。これタマネギの甘みだよね。冬の海眺めながら食うラーメンもいいもんだな!

月の沙漠記念公園

ビーチ完成度 ★★★★★
砂漠度 ★★★☆☆
冬おすすめ度 ★★★★☆

水飲み場:なし  トイレ:あり
自販機:あり  灰皿:なし

月の沙漠記念公園
住所:千葉県夷隅郡御宿町六軒町505-1/アクセス:JR外房線御宿駅から徒歩7分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2024年5月号より