「わあ、こっちに来たよ!」「かわいいねえ」−。子供たちの元気な声が響き渡る野毛山動物園(横浜市西区)で、高い人気を誇るキリンなどの飼育を担当する。「動物が本来の行動をしたり、生き生きした姿を見れるようにすることが大事」と抱負を語る。

動物園の配属になったのは平成18年。もともとは環境コンサルタントの仕事をしていたが、生態系維持のために一人でできることは限られている。どうすればいいのかを考えたとき、頭に浮かんだのは教育の重要性だった。

「それができるところはどこかなと考えたときに、動物園という選択肢があった」と振り返る。転職して「よこはま動物園ズーラシア」の配属となり、20年に野毛山動物園へ。26年にキリンなどの飼育担当となった。

仕事の開始は午前8時半。動物の部屋に行き、食事の食べ具合や様子を観察することから一日が始まる。その後、開園に向けて動物を展示場に出すとともに部屋の清掃を行う。その際も糞(ふん)の状態などを確認し、夜間の様子を撮影したビデオを見ることもある。

キリンは小さな子供でも分かりやすい「動物への入り口の動物」。同動物園には現在、オスのそら(12)とメスのモミジ(9)と2頭のキリンがいるが、担当就任当初はそらだけだった。「(そらに)何かあれば野毛山のキリンがゼロになる。不安で常に胃が痛かった」と振り返る。

だからこそ「心がけているのは心身ともに健康であるようにすること。動物の生き生きした姿が見れるようにすることが大事」との言葉に実感がこもる。

病気になった場合、巨体なだけに、麻酔をかけるのが難しいこともあるという。そのためにも、病気を予防することが重要といい、体温測定などのためのトレーニングもしている。

一方で、現在は週に1回、キリンを見に来たお客さんに説明をする機会もある。「動物のことを話すことはできる立場にいる」とやりがいを感じている。「キリンは(首だけでなく)いろいろなところが長い。子供に『どこが長い?』と聞くと、見つけてくれるので、それがまた動物を見るということにつながっていく」と力を込める。

野毛山動物園の魅力を尋ねると、「間近で動物を見ることができる。においをかいだり、キリンだったら歩く音も聞こえる。五感を使って楽しめます」とにっこり。「春になって動物たちもよく動くようになってきた。ぜひ、いい季節に動物たちに会いに来ていただければ」と呼びかける。(橋本謙太郎)

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