栃木県那須町の河川敷で宝島龍太郎さん夫妻の遺体が見つかってから約2カ月。警視庁捜査1課は首謀者とみられる娘の内縁の夫、関根誠端容疑者らを殺人容疑で再逮捕した。逮捕された6人の関係性は薄く、実行役らは夫妻との接点もなかった。容疑者らが黙秘を続ける中、警視庁・栃木県警合同捜査本部は、地道な防犯カメラ捜査や関係者からの聞き取りなどの多層的な捜査で客観証拠を積み重ねていった。

防犯カメラの専門部隊

夫妻の遺体が見つかった翌日の4月17日午前6時半ごろ、JR五反田駅前の交番に平山綾拳(りょうけん)被告(25)=死体遺棄罪などで起訴=が出頭し、宝島さんの事件への関与を示唆。事態は動くかに思われたが、平山被告は指示役の存在を認めた一方、その素性を隠した。名前すら言わず捜査員は調書で指示役を「Aさん」と記すほかなかった。

宝島さん夫妻や平山被告は東京が生活圏。出頭直後、警視庁は捜査1課の初動捜査班を投入し、栃木県警と合同捜査本部を立ち上げる異例の広域捜査に踏み切った。

初動捜査班は約30人が在籍。重要事件が起きると、防犯カメラ画像の収集や分析を担う専門部隊だ。かつての事件捜査は周辺の住民を回って発生時の状況や、被害者、犯人の情報を聞き取る「地取り」、発生と同時間帯に現場周辺に捜査員を配置し、通行する人に話を聴く「動態調査」が主流だった。しかし、近年は防犯カメラ画像から犯人の動きを裏付ける「リレー捜査」が比重を増す。

足取りから次々と容疑者を特定

同班と捜査支援分析センター(SSBC)の捜査員らはまず、死亡した宝島さん夫妻の足取りを追い、遺体が見つかる前日の15日夜、台東区上野の路上から品川区内へ移動していたことを突き止めた。その間に夫妻と会っていたことで浮上したのが、関根容疑者と前田亮容疑者だった。

平山被告の足取りから、遺体の遺棄現場近くで目撃された車両は15日夜、品川区平塚のコンビニ駐車場で平山被告から男2人に引き渡されていたことも判明。男2人が殺害や処理に関わったとみられる姜光紀被告(21)=同=、若山耀人(きらと)被告(20)=同=であることを割り出した。2人を追った捜査員らは旅行先の大阪へ向かうが、到着時には大阪をたっていた。立ち寄り先を丹念に調べ、30日午後に確保した。

平山被告は16日未明には五反田駅近くの居酒屋で男と会い、近くのコンビニへともに移動。コンビニの防犯カメラ画像から突き止めたのが、指示役の佐々木光被告(28)=同=だった。

関根容疑者らは黙秘を続けており、捜査1課は全容解明に向け慎重に捜査を進めている。(内田優作、前島沙紀)