【パリ=田中一世】フランス訪問中の岸田文雄首相は2日午後(日本時間同日夜)、パリ市内の大統領府でマクロン大統領と昼食会形式で会談した。自衛隊とフランス軍の相互往来をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」締結に向け交渉開始で合意した。締結・発効すれば日仏の防衛協力が深化し、インド太平洋地域で海洋進出を強める中国への抑止力向上につながる。

円滑化協定は、部隊が国外で活動する際の法的地位を明確に規定し、共同訓練や災害救援で相手国を訪問する際の手続きを簡素化する。日豪、日英の協定がすでに発効し、フィリピンとは交渉入りしている。外務省幹部は「日仏の部隊間協力が質、量ともに成熟してきた。協定を結ぶ時期が来たのではないか」と述べた。

フランスは、ニューカレドニアなど南太平洋に海外領土を持ち、インド洋に軍基地を保有するインド太平洋国家だ。中国の海洋進出に懸念を抱いており、日本との共同訓練を重ねている。昨年6月に四国南方で海上自衛隊・航空自衛隊と仏海軍、同7月に宮崎県の空自新田原基地で空自と仏空軍、同9月にニューカレドニアで陸上自衛隊と仏陸軍が実施した。

また、防衛装備品や関連技術の移転を可能とする防衛装備品・技術移転協定や、物品役務相互提供協定(ACSA)も締結している。

今回の首脳会談では昨年12月に合意した安保、経済、文化など幅広い分野の日仏協力拡大のロードマップ(工程表)の進捗状況を確認。首相は首脳会談後、次の訪問地、ブラジルの首都ブラジリアに向け、政府専用機でパリを出発する。