ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップbyサトウ食品最終日(23日、栃木・西那須野CC=7036ヤード、パー72)大会実行委員長がV! 首位と2打差の2位で出た石川遼(32)=CASIO=が6バーディー、2ボギーの68で回り、通算21アンダーで逆転優勝。2022年11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」以来、1年7カ月ぶりのツアー通算19勝目を挙げた。大会実行委員長の任務も担い、誰よりもこのトーナメントを盛り上げようと尽くしてきた男が、自身の成績も最高の結果で締めた。

最後まで主役を演じきった。大会実行委員長を務める石川が逆転V。雨の那須で、これ以上ないシナリオを完結させた。

「日頃からやっていることを発揮して、優勝できる確率を0・1%でも上げることを意識した」

冷静かつ熱いゴルフで頂点をつかんだ。首位の河野祐輝を2打追う2位で出た最終日。5、7番でバーディーを奪って単独首位で折り返した。

勝負の後半へ。だが10番(パー4)で1・7メートルのバーディーパットを外し、11番(パー5)は1打目を右の林に入れてロストボールに。「最悪の流れだったが、試されていると思って集中力が高まった」。残り15ヤードの5打目は「入れなくていいから、1メートル以内に寄せよう」と20センチにつけてナイスボギー。3人が並ぶ首位で迎えた16番(パー5)は「誰よりも取りたい」と心は燃やしながらも、残り220ヤードの2打目をグリーン手前の花道に刻んでの、冷静なバーディー奪取。拳を握り、そのまま逃げ切った。

ツアー選手会が主催する大会。石川は初めて実行委員長を務め、盛り上げに尽力した。予選ラウンド2日間はツアー初の試みとして、後半9ホールでピンマイクをつけてプレー。ABEMAのインターネット中継にキャディーとのリアルな会話を届けた。自らファンサービスも発案した。表彰式後にギャラリーが優勝選手を撮影できる場を設けた結果、被写体となったのは石川自身。「ゴルフに入り込んでくれるファンが増える未来が現実になったらうれしい」と笑顔を見せた。

前週の「全米オープン」から帰国したばかりで疲れもある中、藤田寛之を抜いて12位となるツアー通算19勝目。ともに21歳の金子駆大、田中裕基らと激しい優勝争いを繰り広げ、最後は勝ち切った。「これからも優勝争いをしたときに、若い人の前に立ちはだかることができたらうれしい」。男子ゴルフ界を引っ張る32歳は競技後も、冷たい雨が降る中でサインの求めに対応。最後まで委員長としての責務を果たす姿があった。(鈴木和希)

■ご飯にニッコリ

優勝した石川には、大会特別協賛のサトウ食品・佐藤元(はじめ)社長から副賞として「サトウのごはん」4000食が贈呈された。体重を管理し、普段は1食で220〜260グラムのお米を食べるという石川は、「1パック200グラムなので、体を引き締めたいときにピッタリ」とニッコリ。「買っているので、家にいっぱいあるけど、4000食はないのでうれしい」とご機嫌だった。

【記者のちょっといい話】親身になってくれる〝石川先輩〟

記者は石川の9学年下だが、埼玉の隣町出身で同じ幼稚園に通っていた。ゴルフ担当になった今年、そのことを伝えると「そうなんですね! 家はどの辺ですか?」と新米記者の話にも親身に付き合ってくれた。

石川を取材していると、ファンやメディアを大切にしていることが伝わってくる。今大会でも印象的な場面があった。第3日の14番(パー3)。石川が打つ際に、ギャラリーのカメラのシャッター音が鳴った。影響を受けたショットはグリーンを外れた。だが、石川はその方向を見たりすることはなく、取材では「あれは僕のミスです」と爽やかに対応した。男子ゴルフを盛り上げようと奮闘する〝石川先輩〟を、これからも取材していきたい。(ゴルフ担当・鈴木和希)