AKB48を卒業した後は女優、モデル、タレント、YouTuberなどマルチな活躍を見せてきた、ぱるること島崎遥香。そんなぱるるが2024年に30歳、芸歴15周年目を迎える節目のタイミングで、『ぱるるのおひとりさま論』を刊行した。本の刊行経緯や、彼女が今考えていることを聞いた。

芸能人だって、同じ人間

──『おひとりさま論』は「おひとりさまでもいいじゃないか」と肯定することが全体のテーマかと思います。そもそも、どうして出版することになったんでしょう?

島崎遥香(以下同)
 2024年でちょうど30歳になるというタイミングで、編集者からなにかご一緒できませんか、とお話をいただきました。芸歴としても15周年で節目の年だったので、 なにか記念に残るようなものを、と思ってお受けしました。

──そのなかで「おひとりさま」というテーマにしたのはどうしてでしょう?

最初のイメージは、もっと雑誌みたいな感じだったんですよ。テーマも、「韓国グルメ」についてとか、もう少しポップなテーマで。でも、編集の方と話すうちに、だんだん人生論的なテーマになっていきました。

たった30年しか生きていませんが、普通の人より早く社会に出て、いろいろな経験をしてきたので、アドバイスできることがあるかもと思って。

今はSNSでも、愚痴とかマイナスなものが多いじゃないですか。もしかしたら思っていることを聞いてもらえる相手がいなかったり、自分で解決策を見出せなかったり、そういうことにみんな悩んでるじゃないかと思いました。

──確かに人間関係で消耗している人が多いですね。

SNSで吐き出すのもいいけど、そうしていても本当に孤独になってしまう人もいると思うんです。そういう人に向けて、ちょっと前向きになれるようなものを発信したいと思いました。そう感じてるのは自分だけじゃないと思えるようになってもらえればいいかなと。

芸能界はキラキラして見えるじゃないですか。でも、実際は全然そんなことなくて、芸能人だって同じ人間なんだよ、一人の人間として悩むし、苦しかったときもあるんだよ、っていうことを伝えたかったです。共感してもらえたらうれしいですね。

──なるほど。その中で、「一人でもいいんじゃないか」という、この本全体につながる「おひとりさま」というキーワードが出てきたわけですね。実際に本を出してからの反響は?

若い女の子たちからDMが結構来ていますね。それも、かなり長文で(笑)。みんな、悩んでいるのかな、と思いました。みんなが思ってたけど言えなかったことをはっきり言ってくれた本じゃないかと、ある取材で言われたんです。だから、そういう反応もあるのかと。

連絡先を交換したところで、この人は今後、私とどういう繋がりを持つんだろう、と瞬時に考えちゃう

──たしかに、「一人でもいいじゃないか」ということは、意外とみんな気がついているけど、正面からは言いにくいですよね。逆にSNSなども含めて、現代の人は「つながり」過多になっていますよね。

例えば、知り合いの知り合いに会ったときに、連絡先を交換しようとなるじゃないですか。それがどうしてなんだろう、って考えちゃうんですよね。連絡先を交換したところで、この人は今後、私とどういう繋がりを持つんだろう、と瞬時に考えちゃう。

悪く言えば、本当に自己中心的なのかもしれません。

──そうやって考えると、気が楽になるかもしれませんよね。それにしても、島崎さんは、本当に思ったことをはっきり言われますよね。

アンチの方にも言っちゃうんです(笑)。SNSでも、常にアンチは「ブロックします」と言っていて、でもブロックしたらそれはそれで炎上するんですけど。

でも、そうすることで、そういったコメントは一切消えるじゃないですか。自分の心を守る意味でも大事なことだと思っていて。だからブロックって、芸能人とか有名人にとって最も必要な機能だと思います。

──SNSをやめようと思ったことは?

常に思っています。ただ、時代的にはやはり持っていないといけないので……。

──やはり、「おひとりさま」がいいと。

一人であるべきだというよりも、単純に一人が好きなんですよね、私は。一人になりたいからなっている。でも、それでも、本当に必要な人は向こうからやってくる感覚があるんですよね。

常にカメラから逃げていました

──そうした感覚も含めて、島崎さんはとても自然体で生きているように見えます。

私は小さいころから嘘がつけない性格で、嘘をついている人も好きではありませんでした。しかも、アイドルだったからこそ、余計に作られた世界の中で生きてきたような感覚があって。

私たちのグループ(AKB48)はドキュメンタリーも作っていて、カメラがついてこない日はなかったんです。常にカメラが回っていて、だから他のグループよりは、「素の姿」を見せてきたと思います。

その中でも人間らしくいたいというか、人間らしさがあったほうが魅力的に思うし、そういう人でいたいというのは、小さい頃からいつも思ってました。

──アイドルのときは、やはり自然体でいることは難しかったのでは?

それこそ、一人でいる時間もなかったですからね。

今も言った通り、グループにいたときは、本当に、毎日カメラがいるみたいな感じでした。それは、あまりいい気分ではなかったですね。常にカメラから逃げていました(笑)。

──芸能人の場合、自然体で生きていると、問題も起こりそうですよね。本の中では、島崎さんが社会経験のためにバイトをしたことが週刊誌にスクープされた話なども書かれています。

そうですね。ただ、そういうのには慣れてしまいましたね。それが普通になっちゃっているので。

芸能人は周りから見られている自分のイメージと、本来の自分のイメージが違くて、ギャップで悩む人はいると思いますね。

演者同士では理解し合ってはいるのですが。ちょっと辛いのは、スタッフさんでも、そういう風に私たちを見ているということですね。

何者でなくてもいいんだって思いました

でも、今の芸能人の子とかは、SNSがあって、自分で自分のキャラクターを決められるし、自分で発信できるYouTubeも持てるし、変に他人に編集されずにいれるのはいいな、と思います。

──島崎さんもYouTubeのチャンネルで積極的に発信されていますよね。あれは素が出ている?

そうですね。私のYouTubeには仕掛け人みたいな人が一切いないので、素の自分が大きく出てると思います。

──芸能人にとっても、いろいろな発信のチャンネルが増えるというのはいいことかもしれません。島崎さんが、こうなりたいなと思う方っていらっしゃったりするんですか?

あんまりいないんですけど、理想的だと思うのは、リリー・フランキーさんですかね。リリーさんって 、もともとデザインとか絵本とかを描かれていて。今だと俳優という肩書きでイメージされることが多いと思うんですけど。

以前、リリーさんに肩書きについて質問したことがあるんです。そしたら「自分も何者かわかっていない、それでいいんだよ」っておっしゃっていて。自分も肩書きを問われるときにしっくりこないことが多くて、そうか、 何者でなくてもいいんだって思いました。それはすごく楽になりました。

それと同じでいいなと思ったのが、のんさんです。彼女は「あーちすと」っていう新しい肩書きを名乗っていますよね。

──たしかに。お二人とも、なにかの役割を担っているというよりかは、「ありのままの自分」で活動されている人かもしれませんね。

やっぱりキラキラしたものが好き

──今後、いろんな活動の幅が広がるんじゃないかと思いますが、これからチャレンジしたいことはありますか?

30歳になったときに、これからなにがやりたいかなって考えたんです。

やっぱりキラキラしたものが好きなんですよね。可愛いものというか。女性向けのファッション誌に出たときの世界観も好きだったし。お仕事だとしてもやっぱりいつもワクワクウキウキする。可愛い服を着て、ヘアメイクも新しい方にしてもらって。

そういうキラキラしたものが好きで、お洋服も作りたいし、ファッションショーに関係することもやってみたい。

それと、今は演技をしたいという気持ちも強いんです。でも、バラエティーに出ないかと言えばそうではないし、マルチタレントみたいな言い方が一番いいんですかね?

──それこそ、リリーさんも小説を書いたりしてますよね。本をまた出すというのは?

また人生を積み重ねたときに、なにか感じるものや変わったものがあれば出すかもしれません。

──これからも自然体のままで生きていかれるということですね!



取材・文/谷頭和希 撮影/杉山慶伍 
スタイリング/hao ヘアメイク/小原愛奈

ドレス ¥110,690 Friesenguys(Hi65 Instagram@_hi65_)/その他 スタイリスト私物
 

ぱるるのおひとりさま論

島崎遥香
ぱるるのおひとりさま論
2024年3月21日
1650円(税込)
単行本
ISBN: 978-4479394235
“ぱるる"こと島崎遥香が、おひとりさまライフを楽しく上手に過ごすためのヒントや、おひとりさまについて思うことを、独自の視点で語り尽くす初のエッセイ。撮り下ろしフォトもたっぷり32ページ掲載!