思春期に多く発症する起立性調節障害(OD)の子どもたちが交流する任意団体「起立性調節障害の子どもたちの会」は1日、発足1周年を迎えた。代表を務める横浜市港北区の中学3年、中山知佳穂さん(14)はこの間、会員とともに新たにODの特徴や課題を周知する会も立ち上げた。「病気の正しい理解が広まり、当事者が過ごしやすい社会になることを願っています」と話している。

起立性調節障害の子どもたちの会代表の中山さん(左)と横浜市市民協働推進センターの韓さん=横浜市中区で



小中高生に多く不登校の3分の2とも

 ODは自律神経の働きの不調のため、めまいや頭痛、腹痛、失神などの諸症状が起きる病気で、身体の成長が著しい小学校高学年から中高生に多く発症するとされる。特に朝は起き上がることができず、不登校の子どもの3分の2がODを患うとも言われている。

 中山さんは小学6年の夏に発症し、対症療法で体調を整えながら、遅れた学習を補う日々を過ごしてきた。体をほとんど動かせない時期もあったが、体調は少しずつ上向いており、中学3年に進級した4月からは昼ごろに登校し、授業も受けられるようになってきたという。

横浜市市民協働推進センターがODをテーマに企画した市民対話集会で発言する中山さん(左から2人目)=2023年6月15日


会員12人 月1でオンライン交流会

 同会は、中山さんが横浜市市民協働推進センター(中区)に「起立性調節障害の当事者が安心して集える居場所を作りたい」と相談し、支援を受けて昨年5月に発足。現在は県内と東京、茨城、兵庫の中高生ら12人が会員となり、試行錯誤しながら運営している。

 毎月1回は体調を考慮して夜に1時間ほどオンライン交流会を開き、悩みを打ち明けたり、雑談をしたりしている。交流サイト(SNS)を利用して一般から募った疑問や質問に回答した際は、視聴が50件を超えたといい、中山さんは「私たちで当事者のつらさを代弁できたのかなと思う」と振り返る。

 昨年11月には、ODをテーマとした映画「今日も明日も負け犬。」の上映会と一般参加者らの交流会を兼ねたイベントを開催。小児科専門医で昭和大学副学長の田中大介教授から、諸症状に悩む子どもと家族らにアドバイスをしてもらうなど「有意義で印象深い催しになった」という。

サボりと誤解… 理解広げる会も新設

 この病気はまだ社会的な認知度が低く、周りの人から怠けやサボりと誤解されがちで、本人が自分を責めることも少なくない。発症早期の診断と適切な治療に加え、家族はもとより教職員や同じクラスの児童・生徒らの理解とサポートも必要とされる。

 そうした現状も踏まえ、同会は今年2月、OD当事者と回復した元当事者らが活動する「子どもの輪−起立性調節障害を当事者から広める会−」を立ち上げた。いまODに苦しんでいる子どもたちのためだけでなく、将来ODを発症する可能性のある子どもたちがいることも見すえ、理解を促すリーフレットを作成し、横浜市内の小中学校などに配布する目標を掲げる。

 会の活動を支援する市民協働推進センター副センター長の韓昌熹(ハンチャンヒ)さんは「当事者同士の集まりは孤独感の解消や課題解決の力になっている。ODの理解が社会に広がるよう、他の子どもたちのグループにつなぐなどして応援していきたい」と語る。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年5月1日