開幕8試合でいまだノーアーチの大谷翔平(ドジャース)。新天地への移籍、右肘手術明けといった事情も、あるいは作用しているのかもしれないが、ファンはドジャーブルーのユニフォームを着ての初ホームランを心待ちにしている。ここで改めて、昨季までのメジャー6年間の「シーズン第1号」を振り返ってみることにしよう。

【関連記事】打者専念の大谷は40本塁打&40盗塁の大記録を達成し、ドジャースは強打の遊撃手を途中補強。そして世界一は…2024年MLB「5つの大予言」<SLUGGER>

▼2018年
日付:4月3日(2試合目)
相手:ジョシュ・トムリン(インディアンス/現ガーディアンズ)
シーズン通算:22本塁打(104試合)

 あのベーブ・ルース以来の本格的二刀流として大きな注目を集めたメジャー1年目。開幕戦に8番・DHで出場して初ヒットを放った大谷は、4月1日のアスレティックス戦で初マウンドに立ち、6回3失点の好投を披露した。

 3日、エンジェル・スタジアムでの初出場となった試合で、大谷は初回にいきなり挨拶代わりの一発を放つ。初回、2死二、三塁で技巧派右腕トムリンから右中間へ高々と上がる3ランアーチ。ベンチに帰った大谷が“サイレント・トリートメント”を受けた場面も忘れらない。

 この年、大谷は打っては104試合で22本塁打、投げては10試合で4勝、防御率3.31を記録。9月にトミー・ジョン手術を受けたが、見事新人王を受賞した。

▼2019年
日付:5月13日(6試合目)
相手投手:ホゼ・ベリオス(ツインズ)
シーズン通算:18本塁打(106試合)

 前年9月に右肘にメスを入れたため、この年は打者に専念。リハビリの影響で、自身の開幕も1ヵ月以上遅れた。5月7日に戦線復帰した大谷は最初の5試合で長打が1本も出なかったが、13日のダブルヘッダー第1戦でようやく待望の一発が出た。 3回、走者を一人置いた場面で、相手エース格のベリオスが投じた外角93マイルの4シームを一閃。敵地ターゲット・フィールドのバックスリーン左の電光掲示板を直撃する特大の一発となった。

 その1ヵ月後には、日本人選手初のサイクルヒットも達成した大谷だったが、後半戦は53試合でわずか4本塁打と失速。9月13日には左膝蓋骨の手術を受け、ひと足早くシーズンを終えた。

▼2020年
日付:7月29日(4試合目)
相手投手:ジャスティン・ダン(マリナーズ)
シーズン通算:7本塁打(44試合)

 この年は新型コロナウィルスの世界的流行の受け、開幕が7月24日に延期、無観客開催で60試合の短縮シーズンという、ある種異様な環境下で行われることになった。

 シーズン4試合目となった29日のマリナーズ戦、1点を追う4回裏、無死一・二塁で打席に入った大谷は簡単に2ストライクに追い込まれたが、3球目の内角低めのスライダーをうまくすくい上げると、打球は右中間へ。まさに「技あり」の一発だった。

 翌日も本塁打を放った大谷だったが、この年は深刻な不振に苦しみ、44試合で打率.190、7本塁打。投げても2試合で防御率37.80で、二刀流限界を主張する声も挙がった。▼2021年
日付:4月2日(2試合目)
相手投手:リアム・ヘンドリックス(ホワイトソックス)
シーズン通算:46本塁打(155試合)

 この年は「登板日は打席に立たない」「登板翌日は休養」などの制限を撤廃。二刀流本格稼働で勝負のシーズンに臨んだ。第1号アーチが出たのは開幕2戦目。6対12と大量リードされた9回裏、球界屈指のクローザー、リアム・ヘンドリクスからライナーで右中間戦に叩き込んだ。

 だが、ファンにとってより印象が強いのはその2日後の試合だろう。渡米後初めて「2番・投手」で出場した大谷は初回にいきなり101マイルを叩き出すと、その裏には飛距離451フィート(約137.5メートル)の超豪快弾。“二刀流・大谷”の凄さを全米に知らしめたこのシーンは、大谷のキャリアの中でも最も印象に残る名場面の一つと言っていい。

 本塁打王のタイトルこそ逃したものの、この年は満票でMVPを獲得。大谷は文字通り、MLB最高のプレーヤーとなった。

▼2022年
日付:4月15日(8試合目)
相手投手:マット・ブッシュ(レンジャーズ)
シーズン通算:34本塁打(157試合)

 開幕から1番に座った大谷だが、最初の7試合は打率.172、OPS.441とスロースタート。しかし、「ジャッキー・ロビンソン・デー」で背番号42を着けたこの日は違った。

 初回、プレーボール開始直後の打球をいきなり高々と打ち上げ、グローブライフ・フィールドの右中間のブルペンに放り込むと、5回にも左腕コルビー・アラードから打った瞬間それと分かる特大アーチ。それまでの鬱憤を晴らすかのような爆発で勝利に貢献した。 この年は本塁打数こそ前年から12本減らし、2年連続MVPを逃したものの、投球面での成長が目覚ましく、史上初の「規定打席&規定投球回」に到達。二刀流選手としての“完成度”という点では前年を上回った。

▼2023年
日付:4月2日(3試合目)
相手投手:ケン・ウォルディチャック(アスレティックス)
シーズン通算:44本塁打(135試合)

 3月に行われたWBCでは投打にわたる活躍で侍ジャパンの3大会ぶりの優勝に大きく貢献。直後に開幕を迎えたレギュラーシーズンでも、疲労の影響を感じさせない活躍を見せた。

 敵地で行われた開幕3戦目のアスレティックス戦の5回、WBC決勝で名勝負を演じたマイク・トラウトがまずセンターへ豪快な一発を放つと、続く大谷も負けじとバックスクリーン右へ文句なしの本塁打。エンジェルスが誇る二枚看板の競演に、ベンチは大いに盛り上がった。

 大谷はその後も順調にアーチを量産し、前半戦だけで32ホーマー。8月下旬に右肘、9月上旬には右脇腹を痛めて最後の1ヵ月を欠場したにもかかわらず、日本人選手では初の本塁打王を獲得。2度の満票MVP受賞というMLB史上初の偉業も成し遂げた大谷は、シーズン終了後にFAとなり、ドジャースと10年7億ドルの超大型契約を結んでアナハイムを去っていった。

構成●SLUGGER編集部

【関連記事】大谷は2年連続本塁打王、鈴木は打率3割&30本塁打... 侍メジャーリーガーたちの「2024年のノルマ」【前編】<SLUGGER>

【関連記事】ドジャースの共同オーナー、トッド・ボーリー氏が米経済誌で大谷翔平を語る「オオタニは勝利にとてもこだわっている。それは私たちもそうだ」【PHOTO】新天地ドジャースに加入した大谷翔平の弾ける“スマイル”を厳選してお届け!