アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』が、4月13日(土)夜11:30よりTOKYO MXほかにて放送を開始する。同作は、枢やなの『黒執事』が原作の新アニメシリーズ。原作は、全世界シリーズ累計3500万部を超え、美しく緻密に描かれた世界観と多彩なキャラクターで世界中のファンを魅了している。今回はそのなかでメインキャラクターのセバスチャン・ミカエリスを演じる小野大輔と、シエル・ファントムハイヴ演じる坂本真綾の対談が実現。約15年前に出会ったキャラクターについて本作ならではの魅力や、お互いの印象の変化、『黒執事』という作品の存在について話を伺った。
■「シエルがいてくれるからこそセバスチャンになれる(小野)」
――新シリーズの制作が決まったときの率直なお気持ちをお聞かせください。
小野:前作の劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』(豪華客船編)を演じさせていただいたときに、黒執事を演じきったような感覚があったんです。だから、またこうして演じさせていただけることは驚きではありましたけれど、何よりの“ご褒美”という感じでとてもうれしかったです。「もっと演じていいよ」って温かい声をかけてくださっているような気がして。ファンの皆さんも「見たい」と思ってくれているのかなと期待も感じつつ、改めて演じられてよかったなと思いました。「もっといいものをみせなきゃ!」と気合いも入りましたね。
坂本:私も小野さんと同じように、「豪華客船編」で一段落したような気持ちがあって。あれから年月も経っていたので、最初に制作発表をきいたときはやっぱり驚きました。原作は今も連載中で、変わらず人気であることは知っていたので、ゆくゆくは何かしら映像化されるだろうなと思ってはいたのですが、それが、「テレビシリーズ」という形になるとは想像していなかったですね。そして、今作もキャスト変更なく、また私たちで『黒執事』を演じさせていただけることになって本当にうれしかったです。時間を経てまたシエルを演じられることの意味として、その間に積んできたいろいろな経験を活かして頑張りたいなと思いました。
――そんな久しぶりのセバスチャン役とシエル役はいかがでしたか?
小野:正直、あの頃と変わらずにセバスチャンを演じられるのだろうか、という一抹の不安はありました。でも、収録を真綾ちゃんと一緒にさせていただいて、隣でシエルの声をきいたときに、自然と自分がセバスチャンになっているのを感じました。役自体は自分の声で紡ぐものだと思うのですが、決してひとりではなく、人と一緒につくっているものだよなと、原点回帰したような気持ちにもなりましたね。シエルがいてくれるからこそセバスチャンになれるんだなと。
坂本:シエルを演じるときは、いまだに緊張しますね。初めてシエルに声を当てたときの苦戦した思いがまだ残っているのかもしれないです…(笑)。だからこそ、この役に取り組むときは「昔と同じシエルでいたい」という気持ちよりも、「前作よりもよりよいシエルになりたい!」という気持ちのほうが強くなるんです。今回もあまり過去作を見直したりはせず、今の私が今作のシエルをみて、どう演じていくか…ということだけを考えようかなと思っていました。そういう意味では、プレッシャーを感じるところはありますね。
■「いつの間にかバディとしてお互いに信頼する部分が育まれていった(坂本)」
――過去のインタビューで、シリーズ当初はストイックに取り組むあまり会話もなかったというお話もありましたが、15年前と今とでお互いの印象に変化はありますか?
小野:そうですね(笑)。よくいえば、ストイック。
坂本:よくいえば(笑)。別に仲が悪かったわけじゃないですよね。
小野:そうそう。お互いガッチガチだったんですよ。とにかく若かったゆえに視野が狭くなっていて。他の演者もみんな僕らと同じくらいか年下で、若い人が多い現場だったんです。だから、いい意味でギラギラしていて(笑)。何か爪跡を残そうとか、この役を突き詰めてやろうとかっていう、情熱に溢れていた現場でした。
坂本:それでも、小野さんはずっと変わらないですね。すごく忙しくて体調を崩されることがあっても、こんな感じでいつも誰に対してもニコニコしていて。私だけですよ、多分人と話さなかったのは(笑)。
小野:待て待て待て待て(笑)。ただ、当初は「坂本真綾」という人を、周りが勝手に神格化していた節はありますね。声優になる前からみてきた存在だったので、僕だけではなく、同じ年代の役者たちがみんな「坂本真綾」という人をリスペクトしていて憧れがあったんです。それもあって、みんなちょっとドキドキしていて、どう接したらよいのかわからなかったんですよね。
坂本:そんなことないんだけどなあ。でも、私自身もデビューが早かったことで、先輩後輩の関係とか、みんなとどう接していいのかわからなかったですね。あとは、男の人ばっかりの現場だったから、男性陣でキャッキャしているなかにひとり入っちゃったっていう感じはあったかな。
小野:そっか、なるほどなあ。僕は周りが同性で、同年代だから確かにしゃべりやすかったのかも。初めて言うような気もするけど、真綾ちゃんに対しては「何が好きかな」とか「何の話をしたら盛り上がるかな」とかをすごく考えていましたね(笑)。まず、「隣座っていいのかな?」から始まって……。
坂本:そう! ずっと両隣が空席だったんですよ。私の隣に誰も座らなくて(笑)。みんなが気を遣っている空気を感じつつ、自分に自信がなくて、人とフレンドリーにしている暇がなかったのもあります。あ、でもずっとこの人(小野さん)はいい人です(笑)。
小野:僕も変わらないし、真綾ちゃんも多分変わってないと思うんですよ。話してみるとすごくフランクだし、あとはとにかくストイックだなって。もちろん周りにはそれを強要しないし。どこまでも自分にだけ厳しいところは、当時からずっと演者としてもリスペクトしている部分でとても素敵だなと思っていますね。
坂本:約15年前から、それぞれ役に向き合い悩む日々なども一緒に通りながら、同じ作品で同じ時を過ごしてきて、いつの間にかバディとしてお互いに信頼する部分が育まれていった気がします。それは、もしかしたらシエルとセバスチャンもそうなんじゃないかなと考えていて。最初はビジネスパートナーとして緊張感のある関係だったけれども、特に今回「寄宿学校編」では、お互い頼りにしている場面や気を許しているような雰囲気も感じられて、ビジネスパートナーとしてだけではなく信頼関係もある二人になっています。そんな風に、演じる側とキャラクターとでシンクロしているところもあったりするのかなと思いますね。
小野:いいこと言うよね! 確かにその通りだ!
■本作でのキャラクターの魅力に、「今までで一番カラフルかも(坂本)」
――本シリーズでのセバスチャンとシエル、それぞれからみたキャラクターの魅力を教えてください。
小野:「寄宿学校編」におけるセバスチャンは、「寮監」という役割を演じていて、それを演じること自体をどうも楽しんでいる節がありますね。同じく「寮生」を装い潜入しているシエルの戸惑いや不満をいじって遊んでいるようなシーンも多くて、悪魔的なやらしさが出ています(笑)。茶目っ気のある行動や慇懃無礼な態度もセバスチャンの魅力だと思っていて、そういった部分が本作ではこれまでのシリーズよりも色濃く描かれているのもあるので、僕自身もすごく楽しんで収録しています。
坂本:元々私が感じていたシエルは、頭が良くてクールでカッコいい面と、年相応の無邪気さを表に出せない境遇、暗い過去を背負っている憂いの面を持つ男の子という印象でした。そんな影の部分も魅力といえば魅力ですが、みていて時々胸が苦しくなることがあって…。そんなシエルが、今作の「寄宿学校編」ではすごく生き生きと描かれているような気がします。寮生として、爽やかな普通の少年…自分ではない“もうひとりのシエル”を演じていて、先輩と過ごしてみたり、同室の男の子とベッドでひそひそとおしゃべりをしたり、クリケットの試合に夢中になったり……。もちろん女王の命で潜入している、という前提はあるけれども、今までのシエルにはみられなかったような喜怒哀楽、豊かな表情をいっぱいみせてくれたので、今作が今までで一番カラフルかもしれないですね。
■『黒執事』という作品は、「紛うことなき、“代表作”(小野)」
――改めて、ご自身にとって『黒執事』という作品はどんな存在ですか?
小野:僕は紛うことなき、“代表作”。代表作って、社会的に認知されていて、世間の方々が「『小野大輔』といえば、この作品だよね」って言ってくれるものだと思うんですよ。そうなると、真っ先に挙がるのは『黒執事』。僕自身も、「どんな役をやっているの?」ときかれたら、一番に『黒執事』と答える…そんな作品になっています。名刺代わりの役であり、作品です。あと、『黒執事』があるおかげで、ギャグに振りきった役を演じることになっても「そんな振り幅もあるんだ!」と思ってもらえて、得していますね。
坂本:私は『黒執事』でほとんど初めて男の子役をやらせていただいて、その分苦労もしたのですが、シエルに出会えたから、後々この役にもあの役にも出会えた…というくらい、『黒執事』をきっかけに役の幅を広げてもらえたと思っています。シエルという存在が、私の声優人生を変えてくれたといっても過言ではない大きな出会いでした。今でも同業の声優さんや、道ですれ違った人から「『黒執事』を見ていました」とか「シエルがすごく好きです」って声をかけられることが本当に多くて。年齢も広く、いろんな方々に支持されていて人気のある作品なんだということを、今でもひしひしと感じながら過ごしています。そんな影響力のある作品に出会えたことはとっても幸運だったなと思いますね。
――では、最後に放送を楽しみにしているファンの方々へ一言メッセージお願いします。
坂本:アニメ化の発表があったとき、たくさんの反響をみて、本当に多くの方々が楽しみにしてくださっているんだなとうれしくて。収録をしていても「これは楽しめるだろうな」と早くおみせしたい気持ちになるくらい自信を持ってお届けできるものになっておりますので、是非堪能していただければ幸いです。
小野:原作、そしてアニメと、本当に多くの方々から長い年月愛されている作品で、きっと期待度は高いと思います。本作はファンの皆さまの思いをしっかりと受け止めて、その予想を超えるものになっています。これまでも、そしてこれからも『黒執事』を愛してくださる皆さまの期待は絶対に裏切りません。……あくまで執事ですから。
――ありがとうございました!
小野大輔&坂本真綾が『黒執事』を語る 15年前の収録エピソードも「私の隣に誰も座らなくて…」<アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』>
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