客から理不尽な暴言などの迷惑行為を受ける「カスタマーハラスメント」、いわゆる『カスハラ』が、タクシーなど多くの現場で相次いでいます。東京都はカスハラを防止する条例を制定する方針ですが、罰則規定はありません。法律で罪に問うことは難しいのか、弁護士に聞きました。

 東京都は、「カスハラ防止条例」を制定する方針です。暴力や脅迫などの違法行為だけでなく、威圧的な言動、土下座の強要、差別的な言動、性的な言動などの不当な要求についても「行ってはならない」と規定する方針です。罰則規定はなく努力義務だということで、24年秋の都議会での成立を目指しています。  条例をつくらないといけないということは、法律で罪に問うことは難しいのでしょうか。菊地幸夫弁護士に聞きました。

菊地弁護士: 「決してできないわけではありません。例えば暴行罪だと、犯罪の成立の可能性はあります。タクシーで“座席を蹴る”行為については、これは『暴行罪』に問われる可能性がある」  足が当たっていなくても、暴行罪に問えるのでしょうか。 菊地弁護士: 「例えば、拳で殴りかかった場合だと、当たれば暴行罪だが、当たらなかった場合でも暴力を使っていることになるので、暴行罪になる。(Q当たったかどうかやケガをしたかどうかだけではない?)決定的ではないということです。(Q物を投げたりした場合は?)物を投げて当たらなくても、それは暴力を使ったということです」  運転手に対して「老害が」といった侮辱的な発言を繰り返すことについては、菊池弁護士は『罪に問うことは難しいことが多い』と話します。 菊地弁護士: 「罪になるということで考えると難しいかもしれません。例えば民事の問題として慰謝料を発生させるという意味では、違法な行為といえる可能性はあります」  侮辱罪などにはならないのでしょうか。 菊地弁護士: 「侮辱罪とか名誉毀損罪は、多くの人が見ていたりといった“公然”の時にやらなくてはいけない。タクシーは密室で2人しかいないので、公然のための要件が欠けて、立件が難しくなる」  また菊池弁護士は、タクシーに4人が乗っていた場合は「公然と捉えられるかどうかは、微妙な数」としたうえで、「ドライブレコーダーや録音は重要な証拠になる」として、できる対策をすることを勧めています。