広島・塹江敦哉投手(27)が新境地を開拓しようとしている。昨季までの上手投げから今季は腕を下げ、サイドスローへマイナーチェンジ。主に敵の左打者を抑える役割を中心に担い、ここまでリーグの左投手としては2番目に多い11試合に登板し、1勝3ホールド、防御率0・00と見事な仕事ぶりを発揮している。新井貴浩監督(47)も信頼を置く、今やブルペンに外せない左のスペシャリストだ。

 そんな左腕は年間を通じての稼働を見据え、今季から新たに決め事も自ら設けている。それは「ブルペンでは投げても3〜4球」というものだ。1試合で2度登板に備えて準備する日でもブルペンでは合計10球を超えないように肩をつくり、出番に備えているという。「試合のマウンドでも準備に5球ある。ブルペンでバックアップが1日2回あると考えたら、1回の準備で10球投げると『2回』の日は、登板前から20球ぐらい投げてしまうことにもなる」(塹江)ためだ。

 連投が日常茶飯事になる中継ぎとしての持ち場を踏まえ、準備段階では調子の良しあしに関係なく、あえて抑え目にして本番のマウンドに臨む。

 ブルペンを担当する永川勝浩投手コーチ(43)も「ブルペンで調子が悪いときは20球とか、多めに投げる投手もいますけど、少ないに越したことはない」と肯定的だ。必要最小限の量で本番を迎える塹江の左腕に、リリーバーの適性を感じている。

 全ては1年間を通じ、ベストパフォーマンスを発揮するため。先発、中継ぎにかかわらず投手ならば調子がイマイチな時ほど、準備では「もう一丁」と投げたくなるもの。塹江本人は「まだ始まったばかりなので」と控え目だが〝投げない勇気〟をプロ10年目の飛躍へつなげようとしている。