あの男は、今…。大相撲史上初のアフリカ大陸出身力士だった元幕内・大砂嵐(32=エジプト)が、本紙のインタビューに応じた。2018年に無免許運転が発覚して力士を引退した後は、同年に格闘技イベント「RIZIN」でボブ・サップを相手に総合格闘技デビュー。しかし、再び無免許運転が判明し、日本から姿を消した。現在は米国発の相撲大会に携わり、自らも土俵に〝復帰〟。波瀾万丈の男が明かした近況とは――。

 ――2018年にRIZINを解雇された後は

 大砂嵐 1回エジプトに帰った。格闘技は嫌だし、相撲しかしたくなかった。ずっと頭の中で、プロの相撲リーグを作りたいと考えていたけど、周囲からの反対もあってエジプトでは難しかった。その後は、米国に来て「ワールド・チャンピオンシップ・スモウ(WCS)」というワンデートーナメント大会で「コンバット相撲」を取っている。

 ――「コンバット相撲」とは

 大砂嵐 1試合3ラウンド(R)制で、2R先取した方が勝ち。力士は、ショートタイツの上からまわしをつける。米国のお客さんは大相撲を知らないので、アレンジしてUFC(世界最高峰の総合格闘技イベント)みたいにした。2、3時間の興行で、1人の力士が10回以上取ることもある。観客がお金を賭けることができて、ファンは自分の好きな力士を何回も見られるし、何回も賭けることができる。

 ――大会の反響は

 大砂嵐 今年1月から大会を開催している。今年は合計18回、英国のロンドンとフランスでも開く予定。4月にニューヨーク州のマジソンスクエア・ガーデン(MSG)で開催して、チケット約5000枚が完売した。まさか売り切れるとは自分でも思わなかったし、完売後もチケットを求める声があった。

 ――参戦メンバーは
 大砂嵐 今のところ力士は全部で14人。ロシア出身の元幕内若ノ鵬(大麻所持により08年に日本相撲協会を解雇)や、アマチュア相撲で米国代表チームのヘビー級王者もいる。数日前にもモンゴル出身の元力士から電話がかかってきて、「イベントに参加したい」と言われた。そういうのがうれしい。

 ――なぜ新たな形の相撲大会を

 大砂嵐 自分で何か新しいものを作りたかったし、その方が米国では人気になると思った。

 ――団体内ではどういう立ち位置

 大砂嵐 自分は社長ではなくて普通の力士だけど、団体にアイデアを出している。まだ1月に団体ができたばかりで、試行錯誤している段階。

 ――18年に大相撲を引退して6年がたったが、現在の実力は

 大砂嵐 WCSで負けることはない。MSG大会で元幕内千代大龍(22年に引退)が参戦したけど、私が勝って1位になった。

 ――現在の給料は

 大砂嵐 大相撲時代と同じくらい稼いでいる。イベントが始まったばかりだけど、給料は変わらない。ただ、日本でいうタニマチからのプレゼントとかがないので。

 ――最終的には日本進出も

 大砂嵐 そうですね。このアイデアを否定する人もいるけど、ちゃんと見て応援してほしい。相撲が好きだし、日本人にも喜んでほしい。

 ――今後の目標は

 大砂嵐 4か月間で団体がこれだけ大きくなったのはうれしいけど、まだまだ。米国の観客に寄せた興行だけど、日本とエジプトの皆さんにも応援してもらいたい。

 ――4月にハワイ出身の元横綱で、格闘技でも活躍した曙太郎さんが54歳で亡くなった。ともにデビュー戦でサップと対戦している

 大砂嵐 (13年に)関取に上がった時に初めて会った。曙さんには「お疲れさまです、ちゃんと休んでください」と伝えたい。最後に会ったのは18年で、サップとの試合前に病院で「ちゃんと頑張って」と言われた。MSG大会で、お客さんに「初めて米国出身で横綱になった曙さんが亡くなったので、黙とうをお願いします」と呼びかけた。

 ――そういえば、背景が車内のようだが…

 大砂嵐 米国でちゃんと免許を取った。3人の子供がいて、今日も朝7時から学校へ送迎してきた。無免許運転は絶対にダメだし、もうしていないです(苦笑い)。

☆おおすなあらし 本名アブデルラフマン・シャーラン。1992年2月10日生まれ。エジプト・ダカハレヤ出身。アフリカ大陸初の力士として2012年春場所で初土俵を踏み、13年九州場所で新入幕を果たした。自己最高位は西前頭筆頭。金星3個。18年3月に日本相撲協会から無免許運転を理由に引退勧告を受けた。同年9月に「RIZIN」でボブ・サップを相手に総合格闘技デビュー。現在は今年1月から米国で始まった相撲イベント「WCS」に参戦している。