NHKマイルカップ2024

[GⅠNHKマイルカップ=2024年5月5日(日曜)3歳、東京競馬場・芝1600メートル]

 1番人気が手堅く勝つこともあれば、2007年にブービー人気で激勝したピンクカメオのように、大荒れすることもあるGⅠ・NHKマイルC(5月5日=東京芝1600メートル)。1番人気7年連続敗戦中の現況から流れは「後者」に傾いている。ならばGⅢファルコンSの中に〝隠れていた〟穴馬ロジリオンを大いに推したい。レースを振り返れば、この馬がどれだけの「スピリット」を持っているかが分かる。

 毎回のようにメンバー上位のしまいを繰り出してオール掲示板。戦績面で見れば安定感は十分だが…。「競馬をさせてもらえなかったね」と古賀調教師が振り返るように、前走・ファルコンSは苦々しい5着だった。

 パトロールビデオを見れば一目瞭然だろう。最内枠から出遅れると、道中はそのまま中団のインに押し込められる形。直線では密集した馬群の中からなんとか外に出そうとしたものの抜け出せず、他馬に何度もぶつけられる差し馬にとっては酷な展開となった。それでも気持ちを切らすことなく伸び続けていた。しかも、ムチ1本も使えずほぼ馬なりで、だ。

 レース後に騎乗していた三浦が「ペースが落ち着いてしまって4角から行くところがなかった。前が開いていれば…という展開。状態が良かっただけに申し訳ないです」と頭を下げたのも納得。まともなら際どい決着になっていたのでは? それでも、あのゴチャつきの中で諦めずに伸びようとした姿勢…勝負根性は今回のメンバー内でも間違いなく最上位といっていいだろう。

 今回は休養を挟んでの臨戦。24日に行われた1週前追い切りでは北村宏を背にウッド3頭併せを敢行すると、ラスト1ハロンは11・4秒(6ハロン83・0秒)で伸びて6歳2勝クラス・アンクラウデッドに先着。体を目一杯に使った迫力満点の走りに、指揮官も「中6週ずつのローテーション。馬体に幅が出てきて成長してきたし、フットワークもいいね」と使いながらの成長に目を細めた。

 舞台設定も整っている。「勝っている東京で競馬をさせてあげたい」と古賀師が語るように東京ではGⅡ京王杯2歳S2着など〈2・1・0・0〉と抜群の成績。2走前のリステッド・クロッカスSではファルコンS2着のオーキッドロマンスをアタマ差で差し切って勝利している。この時点で実力はすでに重賞レベルといっても過言ではない。

 厩舎にとっては10年オークス(サンテミリオン)以来、久米田正明オーナーにとっては09年日本ダービー(ロジユニヴァース)以来のGⅠ勝利がかかるこの一戦。ピカイチの勝負根性を誇るリオンディーズ産駒が「堅実派」の称号を脱ぎ捨て、「闘魂走」で陣営にとって久しぶりのタイトルをもたらす。

「闘魂」の走りを見せたいロジリオン
「闘魂」の走りを見せたいロジリオン

 ☆ロジリオン(馬名)冠名+父馬名。父リオンディーズの由来はシェイクスピアのロマンス劇・喜劇である「冬物語」に登場する王様の名前から。3歳マイルの頂点を決める戦いを制して、2歳王者だった父と同じく〝キング〟の称号をゲットする。

著者:東スポ競馬編集部