過去と現在で生徒の質に劇的な変化がもたらされた背景や要因としては、何が考えられるのでしょうか。

「生徒というより親の問題でしょうね。私の学校は、以前よりも圧倒的に非課税世帯が増えました。生活保護で暮らしている世帯の生徒も多いです」と鈴木先生は語ります。

「私の学校は私立ですが、そういう世帯は学校に払うお金はほぼ0円で、国が支援しています。そうなるともう、私立とは言っても、税金で動いてる組織だから、公立高校に近くなってきてしまっているのが実情です」。親の苦しい状況を見て、頑張っても報われない、と感じる生徒も多いようです。

学校を辞めることに何の感情もない

「今は学校を辞めることになっても、何の感情も抱かない生徒が多いんです。昔は、どんなに成績が低い子でも、『次の試験が赤点だったら、ヤバいんですよ! 俺、ここでもダメだったら、もう行くとこ(学校)ないんですよ! どうすればいいですか先生!』と言ってきて、生徒なりに自分の人生を考えているんだと感じたものです。

危機感を持って火がついた生徒なら、いくらでも指導のやりようがあった。でも今は、こちらが『このままだとヤバいぞ!』と言っても、生徒からは『はあ、そうですか』という反応をされます。まるで他人事。自分の人生のことではないかのような反応なんです」

現在の生徒について「自分の人生を生きているという感覚が薄い」と語る鈴木先生。

そうした生徒たちは、学校を辞めてしまうことにも、あまりためらいがないようです。さらには、「当たり前のようにとんでもない言葉を使うようになった」と鈴木先生は語ります。

「(最近の生徒は)『死ぬからいい』って言うんですよ。『お前、このままでどうするんだ?』と言うと、『もしどうしようもなくなったら、死ねばいいんじゃないですか?』なんて大真面目に私たちに言ってくるんです。

それも複数人。簡単にそんなことを言うんじゃない、と思うんですがね。でも、死ぬことも生きることも、彼ら・彼女たちにとってはそれくらい、実感の薄いことになってしまっているのかな、と思います。本当にやり切れないですね」

生まれたときからゲームやインターネットが普及し、「親ガチャ」と呼ばれるような、人生をゲームとして捉える言葉も流行し、「人生をリセットする」感覚がある世代だからこそ、自身の人生を生きている実感が薄れているのかもしれない、と取材を通じて実感しました。

次回の連載では、引き続き鈴木先生に、生徒の変化に大きく関わる親側の変化について、深く掘り下げて聞いていきます。

著者:濱井 正吾