「もう十分働いたのだから、定年後はすっぱり引退して悠々自適に暮らしたい」――。

そうした声も聞こえてきそうだが、実際、職探しをしている65歳以上のシニアは急増している。ハローワークで仕事を探す有効求職者は25万人に及び、10年間で2.2倍に増えたというデータもある(2023年、厚労省調べ)。

昨今の物価上昇により、「年金だけでは老後が不安」というのも主な動機と考えられるが、いずれにしても定年後も働き続けたいと願うシニアが増えていることは間違いない。

高齢者の労働市場で起きている“ある問題”

その一方で、ある問題が高齢者の労働市場で起きている。それは、多くのシニアが望む仕事と、現状ある高齢者向けの求人との“マッチングが進まない”という問題だ。

ニッセイ基礎研究所・ジェロントロジー推進室上席研究員の前田展弘さんは、この問題を「セカンドライフの空洞化問題」として、10年以上前から言及してきた。

ニッセイ基礎研究所・上席研究員の前田展弘さん ニッセイ基礎研究所・上席研究員の前田展弘さん(写真:筆者撮影)

前田さんは「キャリアという切り口で高齢者を捉えたとき、大まかに3つの層に分類できる」と解説する。

まず1つ目の「Ⅰ層」は、経営者や大学教授などのハイキャリア層や、専門の職業資格・スキルを持っているスペシャリストの層だ。

この層はこれまで培った人脈や民間の派遣会社(エグゼクティブ層のエージェント)を通じて、中小企業の顧問や社外取締役などの要職に就くことができる。