一方、京王百貨店が建つ部分と甲州街道を挟んだ南側は、京王電鉄とJR東日本が「新宿駅西南口地区開発計画」として事業を進める。現在の京王百貨店の部分にあたる「北街区」は店舗や宿泊施設などが入る地上19階・地下3階のビルを建設。甲州街道を越えた「南街区」は地上37階・地下6階、高さ225mの高層ビルとなり、こちらも店舗や宿泊施設などが入る。すでに工事に着手しているのは南街区で、竣工予定は2028年度だ。

新宿駅西南口地区開発事業 新宿駅西南口地区開発計画のエリア(画像:京王電鉄)

京王線の新宿駅もこれに合わせて改良する。地下2階ホームの行き止まりの側(北側)を延ばして端部に改札口を新設し、東京メトロ丸ノ内線と乗り換えが可能な動線を整備する。京王によると、この改良によって「列車の乗降のために使用するホームの範囲が移る」といい、実質的にホームが現在より北側に移動する形となる。工事は2024年4月中に着手。ホーム階の新改札設置は2030年度、ホームの移動は2031年度を予定しているという。

新宿駅西南口地区開発事業 南街区 すでに工事が始まっている新宿駅西南口地区開発計画の「南街区」(記者撮影)

北街区は南街区の竣工後に着手する予定。工期は「2040年代」までとだいぶ先で、当面は現在の姿が残るエリアとなりそうだ。同街区の竣工をもって、新宿駅周辺の再開発が完了することになる。

2040年代まで続く再開発

これまで長年親しまれてきた新宿駅の姿は、おおむね1960年代に形作られた。1963年に京王線の駅が地下化し、翌1964年には小田急線の駅が地上と地下の2層構造になった。現在「ルミネエスト」となっている東口の駅ビルが開業したのは同年5月。西口地下広場の竣工は1966年だ。それから約半世紀を経て、新宿駅とその周辺は本格的な大変化の時期に入った。

新宿駅 東西自由通路 2020年7月に開通した新宿駅の東西自由通路(撮影:梅谷秀司)

新宿は、高層ビルが立ち並ぶオフィス街の西口側と歌舞伎町に代表される歓楽街が広がる東口側など、それぞれ表情の異なる街が多くの人をひきつける。再開発は、駅周辺に広がるこれらの街の回遊性を高めることが大きな狙いの一つだ。2040年代まで、これから約20年間は各所で工事が続くことになる新宿駅周辺。ターミナルの利便性と街の魅力を損なうことなく工事を進められるかどうかが今後の課題となるだろう。

著者:小佐野 景寿