今回、エクスパンダーHEV、ミラージュ、アトラージュの生産を行う、MMTh第3工場の最終組み立てラインを視察した。同じ工業団地内に、パジェロスポーツを製造する第1工場、トライトンを製造する第2工場、そしてエンジン工場のMECがある。

ハイブリッド用電池パックの生産工程(写真:三菱自動車工業) ハイブリッド用電池パックの生産工程(写真:三菱自動車工業)

MMTh全体での年間生産能力は、完成車のみで42万4000台。2022年度の実績は、年間27万台だ。

日本の岡山県水島工場(23万8000台)、愛知県岡崎工場(21万5000台)、インドネシアMMKI(15万6000台)、フィリピンMMPC(4万3000台)、そして中国GMMC(2万7000台)をしのぐ、三菱として世界最大規模を誇る。

また、MMThは輸出拠点であり、中南米、中東、アフリカなど世界120カ国向けに出荷しているという。

レムチャパン港にあるMMThの完成車保管場所。最大2万3000台の保管が可能(筆者撮影) レムチャバン港にあるMMThの完成車保管場所。最大2万3000台の保管が可能(筆者撮影)

そのうえで、三菱のグローバル事業を販売台数で見ると、2022年度の世界83万4000台のうちASEAN(東南アジア諸国連合)が全体の32%(うちタイは6%)でもっとも多く、以下、中東・アフリカ・中米(18%)、北米(16%)、日本(11%)、オーストラリア・ニュージーランド(10%)、欧州(7%)、中国(6%)と続く。

こうした数字を見れば、三菱にとっていかにMMThの存在が大きいかがよく分かるだろう。

仮に次世代パジェロがあるとしたら

筆者は過去にもMMTh第3工場を視察しているが、製造ラインにおける部品の配置や、コロナ禍より自社でソフトウエアを開発した従業員のシフトを短時間にすることができるシステムの導入など、今回の取材ではさまざまな点で大きく進化していることを確認した。

日本のユーザーの中には、タイ生産における品質が「日本生産と同レベルなのか」という疑問を持っている人がいるかもしれないが、MMThで働く人たちはグローバル向け生産拠点として誇りを持って、部品サプライヤーと協力して高い品質を実現している。

バンコク国際モーターショーでのMMThプレゼンテーションの様子(筆者撮影) バンコク国際モーターショーにてプレゼンテーション後の三菱関係者らによる記念撮影の様子(筆者撮影)

その証明が、日本ですでに人気が高まっている、新型トライトンである。

日本では、新型トライトンベースの次期パジェロスポーツが日本向け「パジェロ」として日本市場に投入される可能性があると一部で報じられているが、今回のMMTh取材でその事実は確認できなかった。

ただし、仮にそうした次世代パジェロが誕生したとするならば、トライトン、エクスパンダーHEV、エクスフォースなどで熟成された走行制御技術を総動員する、三菱のフラッグシップになることは間違いないだろう。暑いタイでの取材を終えて、素直にそう思った。それだけエクスパンダーHEVは、実力の高い1台だったのだ。

【写真】三菱自動車の「エクスパンダー」「エクスパンダークロス」のスタイリング(10枚)

著者:桃田 健史