――成功している天才としては、どんな人がいますか。

実は、天才って成功しないんじゃないかと思う。一方、「究極のプロ」として思い浮かぶのは今ならメジャーリーグの大谷翔平選手。

「天才と比べないでよ」と言えたほうが頑張れる

――芸能界はどうですか。Mr.Children(ミスター・チルドレン)のすごさについて、本にも書かれています。

そうですね。やはり彼らはすごい。2000年代のことですが、Mr.Childrenが国内での活動をあまりしておらず、もしかしたら今年は年間ランキングで勝てるかもしれないと思った年があったんです。でも、彼らが海外から帰ってきたと思ったら彼らはベストアルバムを出して、僕はあっという間に抜かれてしまった。

でも結局、Mr.Childrenも「究極のプロ」なんですよ。30年以上、第一線で頑張っているわけで、天才というよりは実はプロ。これは本には書かなかったけれど実はそう思っています。

僕がこの本で「天才に勝つ」というコンセプトを掲げたのは、究極のプロである大谷選手やMr.Childrenを「天才」と呼ばなければやってられないところがあるからなんです。どう頑張ってもかなわない圧倒的な存在が自分と同じような人間、打ち勝つべきライバルだと思ったら、もうやってられない。

でも、「あの人は天才だから」とつぶやいて、別次元の存在だと思えば自分を納得させられる。もちろん、別次元だからといって諦めるわけじゃない。自分が凡人だということを受け入れて、ではどうやって天才と戦うかというモチベーションにつなげる。地道にコツコツ蓄積していけば、トータルでは勝てるかもしれない。

本当はきっと、「天才」だって努力している

――凡人にとって重要なのは地道な努力を続けることである、と。

本当は、僕たちが「天才」と呼ぶ人、究極のプロたちだってとんでもなく地道な努力をして、想像を絶する苦労をしているのかもしれない。きっとそうです。でも、「大谷翔平は天才だから」「Mr.Childrenは天才だから」「ジャスティン・ビーバーは天才だから」と言えたほうが楽になれる。そして、「あの人は天才だから、比べないでよ」と言えるほうが自分なりの努力を続けられるんじゃないか。

自分が太刀打ちできない圧倒的な誰かを「特別」な存在とすることで、気持ちが落ち着くし頑張れるというか。

そして、そういう天才たちの言葉はメディアにあふれているけれど、それを真似したからといって同じようにはなれない。天才(≒究極のプロ)と同じ列に並んで競おうとしたらダメだということです。真正面からぶつかるんじゃなく、別のアプローチで地道にコツコツ頑張っていたら勝てる部分が出てくるかもしれない。ある意味、天才は「仮想敵」なんです。

――仮想敵として見るから、自分との差を冷静に分析できるということですね。今、「モーニング娘。」の「仮想敵」として設定しているグループはありますか。

天才とは違うかもしれないけど、K-POPは大きなライバル、1つの目標です。ただ、BTSの世界的な成功を見れば見るほど、あのラインを安易に追いかけ始めると危ないな、と思います。