何より大事なのは心の持ちようです。

年を取ると、たしかにもの覚えが悪くなるとか、重いものが持てない、速く走れない、両方の指でスマホに入力できないなど、できないことも増えてきます。  

しかし周囲と比べるのではなく、過去の自分と比べてみるのです。

人生を足し算で考える

若いときにはできたのに……これもできない、あれも無理だ、と数え立てていては、気持ちが沈んでいくだけです。そうではなく、できるようになったことを意識的に数えてみるのです。

「前はわからなかったのに、こんなに新しいことがわかるようになった」と、自分で自分を励ましましょう。

自分自身でほめるのが難しかったら、ほめてくれる人とつきあうことです。そして自分も人の進歩を認め、応援する、感心する、褒めることを相互交換するのです。

そして、老眼になったら眼鏡をかけるように、聴力が落ちたら補聴器をつける、歩くのがおぼつかなくなったら杖を突くように、使えるものを十分に使いこなして、社会生活を続けていくことが大事です。

恥ずかしいという気持ちにとらわれてはいけません。

「あれもできない」「これもできなくなった」と引き算をして、「人に迷惑をかけないでひっそり消えていくのが美しい」という『徒然草』の時代のような美意識や人生観から解放されなければなりません。

「自分はこれができるようになった」「人の気持ちや社会のあり方がわかるようになった」と足し算で考えて、自己肯定感を高めていくようにしましょう。

著者:坂東 眞理子