近年になって脱炭素社会を目指す動きが世界で加速し、各国がネットゼロ目標を掲げている。

イギリスでは中央政府が2050年ネットゼロを宣言したのに対し、スコットランド自治政府は2045年ネットゼロを標榜。当然のことながら、スコッチウイスキー産業も脱炭素化に努めなければならない。

このような状況のなか、スコッチウイスキーの製造者たちはどのような取り組みを進めているのだろうか。世界100カ国以上の現地在住日本人ライターの集まり「海外書き人クラブ」の会員が取材した。

130年ぶりに蒸溜所がオープン

2023年2月。スコットランドの北部にあるハイランド地方の主要都市、インヴァネスの中心部に、クラフトビール醸造所兼ウイスキー蒸溜所が新設オープンした。インヴァネス市内にウイスキー蒸溜所が新たにできたのは、じつに130年ぶりのこと。

最新のカスタム設計酒造設備もさることながら、ここが注目に値するのは、スコットランド屈指の模範的な低炭素酒造所と称えられている点だ。

カーボンフリーのスコッチウイルスキー スコットランドのケルト系先住民の言語ゲール語で「怪物」を意味する「Uilebheist(ウーラヴェイシュト)」という名を冠したクラフトビール醸造所兼ウイスキー蒸溜所(写真:筆者撮影)

市街地という立地条件を考慮して、オペレーションをオール電化。燃焼ガスは発生しない。

醸造・蒸溜の熱源には、一般的な重油ボイラーではなく、高効率の電気加熱式ボイラーで生成した蒸気を利用。使用電力はすべて再生可能エネルギー由来で、その一部は屋根に設置した容量50キロワットの太陽光パネルで発電している。

カーボンフリーのスコッチウイルスキー 屋根を覆う太陽光パネル(写真:筆者撮影)